研究課題/領域番号 |
19K15417
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森川 響二朗 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (20796437)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナノ流体工学 / ナノ電極 / 流動電流 / 流動電位 |
研究実績の概要 |
近年、マイクロ流体工学がさらなる微小化を遂げ、ナノ流体工学へと研究が進展しつつある。研究代表者のグループでは10-100 nm空間での研究ツールを開発し、様々な革新的性能を実現してきた。しかしながら、ナノ空間では流体デバイス工学において最も重要な流量(aL-fL/sec)を計測する方法がないため、革新的ナノ流体デバイスの創成に至っていない。そこで、本研究では、溶液の圧力駆動による流れを電流/電位として検出する流動電流/流動電位法という研究代表者独自の方法でナノ空間のaL-fL/sec流量を計測することを目的とする。具体的には、流動電流/流動電位を計測するためのデバイス作製、ナノ空間の物性計測による流量値と流動電流/流動電位値の関係の解明、ナノ流体デバイスへの適用とする。 2019年度は流動電流/電位計測を実現するための電極を集積化したナノ流路の加工に取り組んだ。ナノ流路が複雑に分岐・合流をするナノ流体デバイスではナノ流路1本1本で生じる流量を計測する必要があるため、各々のナノ流路に対して電極を設置して流動電流/流動電位を計測する必要がある。加工精度として電極自体が100 nmスケールという流路サイズと同スケールの加工となるため、ナノ流路での溶液の流れの妨げ、または電極のスペースへの溶液のリークなどを防止しつつ電極を集積化することは非常に困難であった。そこで研究代表者は従来のリソグラフィー、エッチング、基板接合という加工法に加え、金属メッキ液をナノ流路へ流し、金属メッキによってナノ流路を形成するという新しい手法を開発した。これは従来の加工法にナノ流体工学・ナノ電気化学の技術を取り込んだ方法であり、ナノ流体デバイス工学の基盤技術として非常に重要なものとなる。これによりガラス製ナノ流路の一部にのナノ電極を集積化したナノ流体デバイスを初めて実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の研究計画は流動電流/電位計測を実現するための電極を集積化したナノ流路の加工であった。従来のリソグラフィー、エッチング、基板接合という加工法に加え、ナノ流体工学・ナノ電気化学の技術を取り込んだ新しい方法によって実現した。よって計画通り研究が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画通り、2020年度以降は作製したデバイスを用いてナノ流路内を流れる溶液の物性計測に取り組んでいく。得られた物性値を用いて計測した流動電流値を流量値への校正に取り組み、流量計測の原理検証を行う。
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