研究課題/領域番号 |
19K15418
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
庄司 観 長岡技術科学大学, 産学融合トップランナー養成センター, 特任講師 (80788258)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナノポアセンシング / マイクロ流体力学 / 脂質二分子膜 / 走査型プローブ顕微鏡 |
研究実績の概要 |
本研究では、ポア形成膜タンパク質をプローブ先端に構築した生体ナノポアプローブとマイクロ流体制御技術を組み合わせた、新たな細胞観察プラットフォームの開発を最終的な目標としている。生体ナノポプローブを用いた細胞観察手法を確立することにより、細胞から放出される分泌物質の局所センシングが可能となり、細胞生物学、創薬化学、再生医療工学など様々な分野において、新たな細胞観察手法を提案することが可能となる。本提案では、局所的な化学物質の検出が可能な生体ナノポアプローブ技術と細胞培養・刺激・マニピュレーションが可能なマイクロ流体制御技術を組み合わせることで、上記コンセプトの実現を試みる。本年度は、生体ナノポアプローブの課題であった電流値の減衰を改善するために下記の二種類の生体ナノポアプローブを新たに開発した。 1.銀塩化銀マイクロ電極を用いた生体ナノポアプローブ 金ナノニードルを用いた従来の生体ナノポアプローブでは、金表面のチャージアップにより電流が減衰していた。そこで、平衡電極である銀塩化銀電極を用いた生体ナノポアプローブを開発、安定したチャネル電流を長時間計測することに成功した。また、本研究結果に関しては現在論文投稿中である。 2.ゲル封入ナノピペットを用いた生体ナノポアプローブ 生体ナノポアプローブによる化学物質検出の空間分解能向上を目指し、先端径のさらなる微細化を行った。その結果、直径約300nmのガラスナノピペット内にハイドロゲルを封入したゲル封入ナノピペットを用いた生体ナノポアプローブを開発した。従来法では、ナノピペットの先端に脂質二分子膜を形成することは困難であるが、本研究ではハイドロゲルをピペット内に封入することでピペット先端に脂質二分子膜を形成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、新たな生体ナノポアプローブを開発することによって、安定した化学物質の検出が可能となった。ナノポアセンシングによる細胞分泌物質の検出を目指す本研究テーマにおいては、計測される電流値の安定性が非常に重要であるため、本研究目標を達成するための非常に重要な研究成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に開発した生体ナノポアプローブを用いたプローブ顕微鏡を構築することで細胞観察プラットフォームを構築する。具体的には、得られたチャネル電流値をフィードバックしプローブ位置を制御するプログラムを構築する。さらに、細胞を内包可能なマイクロ液滴を形成しトラップするマイク流体デバイスを開発し、生体ナノポアプローブを用いた細胞観察プラットフォームへの応用を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度のほとんどの期間、国際連携機関であるアメリカのUniversity of Cincinnatiで研究を行ったため、次年度使用額が生じた。また、次年度以降にDNAなどの高額な試薬、装置を購入必要があるため、次年度に研究費を繰り越した。
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