本研究では、ポア形成膜タンパク質をプローブ先端に再構築した生体ナノポアプローブを用いた新たな細胞観察プラットフォームの開発を最終的な目標としている。生体ナノポプローブを用いた細胞観察手法を確立することにより、細胞から放出される分泌物質の局所センシングが可能となり、細胞生物学、創薬、再生医療工学などの分野において、新たな細胞観察手法を提案することが可能となる。本年度は、昨年度までに開発した生体ナノポアプローブを用いた段差計測実験およびDNAナノポアを用いた新たなプローブ開発に取り組んだ。 1.生体ナノポアプローブを用いた段差計測 ゲル封入ナノピペットを用いた生体ナノポアプローブを自作のプローブ顕微鏡システムに搭載し、厚さ25μmのテフロンシートによって構築される段差計測を実施した。その結果、従来のガラスピペットを用いた顕微鏡と同等の性能を確認することができた。一方で人工細胞膜の破損や生体ナノポアのポア数変化による影響があり、今後本プローブ顕微鏡の実用化に向けて、膜の耐久性向上やポア数の制御方法が必要であることが確認された。 2.DNAナノポアを用いた新たなナノポアプローブの開発 従来の生体ナノポアプローブにおいて用いられているポア形成膜タンパク質には、ポアの再構築を制御することが難しいという課題が存在する。そこで、構造DNAナノテクノロジーによって構築されるDNAナノポア構造体に着目し、新たなナノポアプローブを開発した。 以上のように、本若手研究では、複数種類のナノポアプローブの開発、それらのプローブを用いた局所分子検出、段差計測を実施することで、生体ナノポアプローブを用いた細胞観察手法確立の可能性を示唆することができた。
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