研究課題/領域番号 |
19K15420
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
内藤 豊裕 京都大学, 工学研究科, 助教 (10711806)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 微小流体 / 液体クロマトグラフィー |
研究実績の概要 |
液体クロマトグラフィーの分析感度や分離度を向上につながるため,カラム効率の改善は感心が高い。一般的に,粒径の小さい,真球状の粒子を,均一・高密度に充填したカラムが高いカラム効率を有するとされている。しかし,カラム効率評価において広く用いられるvan Deemterの式では,粒子形状や,形状・サイズ・充填状態の均一性とカラム効率との関係は十分に説明されていない。本研究では微細加工技術を用いて,均一性を精密に制御したカラムを作製することで,カラム内均一性とカラム効率の関係を調べることを目的とした。本年度は,カラム内均一性を制御した多分散型カラムの作製と,微細加工によって作製したカラム(微小流体カラム)の測定系の構築を行った。 設計したすべてのカラムは,幅,長さがともに0.05mmの構造体を配列した微小構造体配列を基本構造(単分散カラム)とした。多分散カラムでは構造体幅について,平均0.05 mm,標準偏差s(s=0.08,0.15,0.22)の対数正規分布に従って不均一化させた。構造体幅の制御間隔を作製時の加工精度よりも十分大きくすることで,設計した通りの不均一性をもつカラムを作製することができた。また,配列した構造体の順序だけを変化させた 当初設計したカラムでは,カラム内不均一性がカラム効率に与える影響を測定することが困難だったため,カラムの再設計を行うとともに,試料注入および検出方法の検討を行った。測定系の改善によって,単分散カラムがもっともカラム効率が高く,不均一性の増加によってカラム効率が悪化することを,実験によって確認することができた。また,シミュレーションによってカラム内の流れを評価することで,カラム内不均一性のカラム効率に与える影響は,測定系のデッドボリュームによっても変化することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的では構造体幅,構造体長さ,構造体間隔,配列順序について不均一性を制御したカラムを作製し,評価する予定であったが,本年度は構造体幅の不均一性制御と異なる配列順序のカラムの評価に留まった。これは,実験を進める上で,測定系の改善,および,構造体設計の制限による意図しない不均一性の増加,というふたつの問題が出てきたためである。一つ目の問題については,問題解決のための様々なデータが得られ,今後の研究を進める上で重大な知見が得られた。二つ目の問題は,問題解決していくなかで,充填状態の不均一性の制御と同じ問題であることを見出し,新たな調査対象として現在研究を進めている最中である。 計画段階に比べて遅れた面がある一方で,研究を遂行する上で重要な知見が得られ,新たな調査対象を発見した面もあるため,概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
現在,構造体幅についてのみ不均一化させたカラムの設計と評価を行なっているが,令和2年度は構造体幅と構造体長さを同時に不均一化させたカラムの設計と評価を行う。また,カラム内不均一性について,単分散カラムとの比較から,充填剤のサイズ分布,形状分布,充填状態など,様々な不均一性を総合した指標について考案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により,施設利用を控えたため。
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