研究実績の概要 |
クロマトグラフィーにおける粒子充填カラムは,一般的に,粒径は小さく,形状は真球状,粒子サイズは均一,充填密度は高いほど,高いカラム効率を有するとされている。しかし,カラム効率評価において粒子の形状や,形状・サイ ズ・充填状態の均一性を定量的に制御することは困難で,均一性とカラム効率との関係は十分に評価されていない。昨年度は,均一性を定量的に扱うため,微細加工技術を用いて多分散カラムを作製し,均一性がカラム効率に与える影響を評価する実験系の構築を行ない,カラムの不均一性の増加によるカラム効率の悪化を確認することができた。
本年度は,構成構造体を並び替えたカラム,充填状態に欠陥を持つカラムを作製し,カラム内の均一性がカラム効率に与える影響について別の角度から評価した。平均0.05 mm,標準偏差s(s=0.08,0.15,0.22)の対数正規分布に従って不均一化させたランダム型多分散カラムと,カラムを構成する構造体をサイズ順に整列させた秩序型多分散カラムを作製した。すべての標準偏差において,ランダム型に比べて秩序型のカラムが高いカラム効率を示した。また,標準偏差が小さい場合は秩序型カラムに性能の差は見られなかった。これらのことから,任意の粒子とその近接粒子とのサイズ差のばらつきが,秩序型では小さく,局所的に単分散なカラムとなっているため,カラムを構成する構造体が同じでもカラム効率が高区なることが示唆された。欠陥構造を含むカラムでは,欠陥構造の割合が増えるにつれて性能の悪化が確認されたが,構造体サイズの分布の影響に対して欠陥構造の影響は小さいことが示唆された。この多分散カラムと不均一性を持たせていない単分散カラムとを検量線のように用いることで,粒子充填カラム内の不均一性を評価することができると考えられ,今後の粒子充填カラムの設計や改善の指標としての利用が期待される。
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