研究課題/領域番号 |
19K15426
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
太田 亘俊 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (60705036)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | マイクロバンドルプローブ / キャピラリー / 微量液体採取 / 細胞分泌物 / 局所刺激 |
研究実績の概要 |
本研究は、細胞分泌物による細胞間コミュニケーションの簡便な分析を実現するため、毛細管(キャピラリー)を密に集めることで、ピペット等では難しい複数個所からの微量液体採取を、任意の回数行うことができるマイクロバンドルプローブ(以下、デバイス)の開発を目的としている。今年度は、培養細胞の一部細胞だけを局所的に刺激するデバイス機能の検討と、分泌物が豊富な培養マクロファージを用いた複数個所・複数回細胞分泌物採取のデバイス応用について調査した。 局所細胞の刺激は、培養筋肉細胞に細胞剥離を起こすトリプシンを適用することで検討を行った。培養皿全体に培養細胞が接着した状態で、デバイスを用いてトリプシンを一部の培養細胞に当てると、トリプシン刺激を受けた細胞のみ培養皿から剥離するため、デバイスによる局所刺激が可能な範囲が分かる。その結果、数百万個程度の細胞がいる培養皿中で、デバイスを用いると最小で数個、最大で3,000個程度の細胞を局所的に刺激できることが確認された。また、適切な流体操作により、刺激領域と非刺激領域を隣接して作り出すことができ、顕微鏡の一視野中で異なる化学刺激を受ける細胞群を作成できることも確認された。この手法は、培養皿中の一様な培養細胞群の中で、局所的に異なる細胞パターンを作成することに応用できる。 マクロファージを用いた調査では、昨年度に検討した微量液体を複数個所から複数回採取するデバイス機能を細胞分泌物採取に応用した。同時に、上記の局所刺激法を用いて刺激細胞群と非刺激細胞群を作り、細胞分泌物量の経時変化を追跡した。刺激を行う分子にはグラム陰性細菌の構成成分であるリポ多糖を、測定対象分泌物には腫瘍壊死因子の一種(TNF-α)を選択した。この調査では、非刺激細胞群に比べて刺激細胞群が分泌するTNF-αの量が有意に増加し、その経時変化を追跡できることが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画では、複数個所・複数回液体採取に関するデバイス機能について、細胞を用いた検証と評価を予定していた。今年度の研究で、この液体採取方法は細胞分泌物の回収に応用できることを確認した。また、細胞群の一部のみを刺激する局所刺激に関するデバイス機能についても確認を行った。予定していた研究項目の検討と評価が完了したため、今年度の計画はおおむね順調に進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画に沿って、デバイスの構築と機能検証、デバイスを使用した細胞分泌物測定への応用が行われ、予定していた研究項目の検討と評価が完了した。現在、本研究の成果を論文にまとめており、必要に応じて各研究項目の追加検証等を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究成果をまとめた論文を投稿しており、関連する費用に差額が生じたことから、次年度使用額が発生した。次年度使用額は、論文投稿料や追加実験に必要な消耗品の購入に使用する予定である。
|