研究実績の概要 |
本研究では、磁気トンネル接合中の熱を利用することで、ボロメーターに匹敵するほどの超高感度なダイオード検出感度の実現を目指している。その結果、2019年度に「①ダイオード検出感度 3.37×10^6 V/Wを実現」「②巨大ダイオード効果のメカニズムにスピントルク自励発振が効いていることを実験的に解明」「③熱による磁気異方性変化の大きさ2.1 uJ/Wmを実現」を達成した。 ①では、研究提案時の目標2.4×10^5 V/Wの10倍以上の値を得た。この値は従来報告されている最大のスピントルクダイオード検出感度2.0×10^5 V/W(L. Zhang, Appl. Phys. Lett, (2018))と比較しても10倍以上大きい。また、赤外線周波数領域で用いられる既存の非冷却型ボロメーターの感度10^5~10^6 V/W(例えばS.Y.Chiang, Nano. Lett, (2020))とも遜色なく、マイクロ波周波数帯でこのような巨大な検出感度は今回が初めての報告である。 また、このような高い検出感度の原因はスピントルク自励発振が寄与していることを実験的に明らかにした。本実験で得られたメカニズムはこれまで論じられておらず、新しい学術的知見ももたらすものである。 熱誘起磁気異方性変化の大きさを評価するために、単位面積当たりのジュール熱と磁気異方性変化の比を用いた評価手法を提案した。その結果、本試料における熱誘起磁気異方性変化は2.1 uJ/Wmであることが分かった。この値は、従来研究における値0.9 uJ/Wm(M. Goto, Nat. Nanotechnol, (2019))の2倍以上であり、この大きな効果が巨大なダイオード検出感度につながったと考えられる。 以上の結果と関連する研究を2019年秋と2020年春の国内学会において発表し、論文作成を行った。
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