研究課題/領域番号 |
19K15437
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
笠谷 雄一 日本大学, 理工学部, 研究員 (30836507)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | スピントロニクス / ダンピング定数 / 電界効果 / 強磁性共鳴 / 磁気光学効果 |
研究実績の概要 |
本年度は、「電界効果による磁性金属の磁化緩和機構の能動的制御」に向けて以下の二つの研究を中心に行った。 (1)強磁性共鳴法によるダンピング定数測定に向けた予備実験 昨年度から今年度にかけて導入した温度可変垂直磁場印加型高周波プローバーシステムとベクトルネットワークアナライザーを用いて強磁性共鳴測定を行った。試料温度を5 Kから室温まで変化したところ、強磁性共鳴周波数の共鳴ピークが磁気特性の温度変化を反映して変化していることは確認できた。また、明確なダンピング定数を見積もるため信号雑音比の増大にむけて試料および実験装置のさらなる改善に取り組んでいる。 (2)希土類―遷移金属合金フェリ磁性体の電界効果による磁気光学効果変調の試みおよび時間分解光学測定系への試料電圧印加機構の組み込み 昨年度に引き続き、電界効果による磁気特性変化の光学的測定のために、試料に電圧を印加しながらHe-Ne連続波レーザーを用いて試料の磁気光学カー効果を測定した。直流電源に代えて任意信号発生機を用いたロックイン測定を行い、電界効果による明瞭な磁気特性の変化については現在も引き続き検討を行っている。磁化緩和機構の電界効果による変化の時間分解測定のために、ポンプ―プローブ磁気光学効果測定系においてゲート電極構造を有するGdFeCoフェリ磁性体薄膜試料を用いて磁気光学カー効果の時間分解測定よりダンピング定数および歳差運動周波数の電圧変調の測定を試みた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究において最も重要な事項の一つである、電界効果による磁化緩和機構の制御に向けて、強磁性共鳴測定系を用いた予備実験を行った。試料の磁化が小さいため得られた結果の信号雑音比が小さく、ダンピング定数を評価するには至っていない。電界効果によるダンピング定数変調を精密に評価するには、測定手法の調整やゲート電圧印加可能な試料の作成が必要である。また、昨年度導入したゲート電圧印加可能な光学試料ホルダーを改造し、ポンプ―プローブ磁気光学測定系に導入したことで、ゲート電圧印加下での時間分解磁気光学効果が測定可能となった。しかし、現状では電圧源出力上限の電圧を印加しても磁性体の磁気光学効果の変調は明確には測定できていないため、今後は試料構造および絶縁層材料の再検討および実験系の最適化を行う必要がある。本年度は新型コロナウイルス感染症の影響による所属機関への入構制限と試料成膜装置の故障により一部計画を変更して研究を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、金属電極/SiN絶縁体/GdFeCoフェリ磁性体積層試料において、ベクトルネットワークアナライザーを用いた強磁性共鳴測定とフェムト秒パルスレーザーを用いたポンプ―プローブ法による時間分解磁気光学計測を行い、磁化緩和過程における電界効果を周波数領域・実時間領域の両側面から明らかにする。令和2年度までに実験状況は確立しつつあり、令和3年度は主に計測に注力して研究を進める。前年度までの結果と合わせてまとめ、論文を投稿するとともに、国際・国内学会で現地・オンラインを問わず発表を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症流行による所属機関入構制限および参加予定学会等の中止・延期のため、一時的に研究活動および成果発表ができなかった。そのため、物品費に使用予定の一部ならびに旅費に使用予定であった直接経費を使用できなかった。研究課題の次年度延長と残額の繰越を希望し、光学系および高周波プローブシステムでの計測において必要な物品の購入、学会参加費および論文投稿費に助成金を使用する予定である。
|