グラフェン上に白金(Pt)単原子を形成する場合、グラフェンを窒素ドーピングすることによってPt原子が凝集することを抑制することをこれまでに示してきたが、グラフェン上でのPtとNの原子構造は明らかになっていないため、凝集を抑制するメカニズムはわかっていなかった。本研究ではその原子配置を明らかにすることを目的としている。前年度はグラフェン内にドーピングされた窒素とPt単原子の原子配置が可能な実験データを得るために収差補正走査透過型顕微鏡(STEM)を用いた電子エネルギー損失分光(EELS)マッピングの測定条件を調整した。本年度は前年度に取得した実験データを用いて原子配置を行い、その結合の安定性等を第一原理計算によって評価した。 STEM実像と同時に得たEELSマッピングデータの解析を行い、Pt、N、および炭素(C)の原子配置を実験的に明らかにした。PtおよびN原子は、グラフェンの六員環がきれいに配列したテラスではなく、単層のグラフェンに積み重なったナノグラフェンのステップエッジの近くに吸着していた。実験構造を用いたDFT計算により、ステップエッジでNがPtとCの結合を強化し、Pt単原子の安定性を高めることが確認された。Pt 5dxy軌道の占有数の大幅な減少に加えて、5dyz軌道の占有数の増加が認められた。それらの結果をまとめた論文はJ. Phys. Chem. C誌に掲載された。今後は、構造安定性と、触媒に適用するための化学反応におけるその活性の関係を明らかにすることが重要である。
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