研究課題/領域番号 |
19K15445
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
羽尻 哲也 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (80727272)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ノンコリニア反強磁性体 / 逆ペロブスカイト窒化物 / スピントルク / スピン軌道トルク |
研究実績の概要 |
逆ペロブスカイト窒化物反強磁性体Mn3ANはA原子によって反強磁性スピン構造や局所磁気モーメントの大きさが変化する事が知られている。昨年度はA原子を変えた反強磁性体Mn3AN/強磁性体積層膜において交換結合磁界の電気的スイッチングを行い,交換結合磁界の反転が飽和する電流密度はMnの局所磁気モーメントの大きさに相関することを見いだしてきた。一方でMn3GaN/Pt積層膜において強磁性体のスピン軌道トルクと同様の測定を行ったところ,パルス電流密度に依存して可逆的にホール抵抗が変化する事を見いだしたが,その起源が明らかでなかった。交換結合磁界のスイッチングに比べ,スピン軌道トルクではより直接的に反強磁性スピンの挙動を観測出来ると考えられる事より,本年度はMn3GaN/Pt積層膜のホール抵抗の電気的スイッチング機構の解明に重点を置いて研究を進めた。 Mn3ANはΓ4gおよびΓ5gと呼ばれるノンコリニア反強磁性構造を取り,Γ4g構造あるいは歪んだΓ5g構造を取るときベリー曲率がブリルアンゾーンでノンゼロになり異常ホール効果が発現する。Mn3GaNは室温においてはΓ5g構造を示す事より,歪みのないMn3GaN薄膜においては異常ホール効果は観測されなかった。一方で引っ張り歪みを印加する事で異常ホール効果が発現し,その歪み量に応じて異常ホール効果が大きくなる事を見いだした。 歪み印加したMn3GaNとPt or Ta積層膜においてスピン軌道トルク測定を行ったところ,歪み量から期待される異常ホール効果と同程度のホール抵抗の変化が観測された。またパルス幅依存性やパルス印加後のホール抵抗の減衰挙動より,パルス印加による熱の影響はあるものの,観測されたホール抵抗のスイッチングへの寄与は小さい事を見いだし,スピン軌道トルクである事の実証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた反強磁性体/強磁性体における交換結合磁界の電気的スイッチングに加え,ノンコリニア反強磁性体/重金属積層膜におけるスピン軌道トルクへの展開を行う事が出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
ノンコリニア反強磁性体/重金属積層膜におけるスピン軌道トルクのさらなる高効率化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言による研究中断,予定していた国際学会のオンライン化により,消耗品・旅費が想定以上に使われなかったため。 繰越金は次年度に投稿予定している論文投稿費用,消耗品に充当する予定である。
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