研究課題/領域番号 |
19K15446
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
麻生 亮太郎 九州大学, 工学研究院, 准教授 (40735362)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 環境制御型透過電子顕微鏡 / その場観察 / ダイナミクス / 電界蒸発 / 電界放射 |
研究実績の概要 |
本研究では、電界、電子線、熱の外部刺激を印加した際に起こる、気体分子と金属・酸化物表面原子との化学反応に伴う高速ダイナミクスを実空間・実時間で観測することを目指す。観測には、気体雰囲気下において原子レベルで動的観察ができる環境制御・透過電子顕微鏡(E-TEM)を利用し、さらに高速カメラを用いて化学反応中の個々の原子の高速現象を捉える。本研究では、第一に様々な気体雰囲気下で金属・酸化物表面の原子構造解析を行う。第二にナノレベルの局所領域に電界を印加し、電界誘起による表面原子の高速ダイナミクス現象を捉える。第三に照射電子線を制御することで、電子線誘起による気体分子と表面原子の高速反応を解明する。第四に実環境での検証として、大気圧の気体雰囲気下での表面構造解析ならびに加熱時の表面原子構造の温度依存性を調べ、気体反応の学理の構築に貢献することを目的とする。 代表的な貴金属であるAuをターゲットとして、電解研磨法によって電極針を作製した。ナノメートルレベルの先端を持つ金属電極針を向かい合わせたナノギャップ構造をTEM内でその場形成し、電気的刺激により気体分子を活性化し、電極表面の金属原子の電界蒸発を誘起させた。高空間・高時間分解能の最先端透過電子顕微鏡を用いることで、ガス雰囲気中で動作するナノギャップ電極において、ガス分子が電極表面の金属原子と反応することを見出した。ここで、電極表面反応において重要となる局所的な電場の影響を調べるために、ナノギャップ電極先端近傍に形成される電場のシミュレーションを実施した。電極針先端の曲率半径ならびにギャップ間隔を系統的に変えることで、局所的に増強された電場の分布と金属電極表面の原子・分子ダイナミクスの関係性の解明を進めた。本研究により得られた成果は、ナノ構造体の形成条件(印加電圧、電界分布、気体種、気体分圧、結晶面)を見出すための重要な知見となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電極表面反応において重要となる局所的な電場の影響を調べるために、ナノギャップ電極先端近傍に形成される電場のシミュレーションを実施した。電極針先端の曲率半径ならびにギャップ間隔を系統的に変えることで、局所的に増強された電場の分布と金属電極表面の原子・分子ダイナミクスの関係性の解明を進めた。本共同研究により得られた研究成果は、日本顕微鏡学会その場観察分科会2020年研究討論会において、招待講演者として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
ナノギャップ電極先端近傍に形成される電場のシミュレーション結果をもとに、実測データを評価する。電極針先端の曲率半径ならびにギャップ間隔を系統的に変えた結果をまとめ、論文発表の準備を進める。金以外の貴金属でも同様の測定を行い、金属表面の気体反応に関する統一的な知見を得ることを目指す。
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