研究課題/領域番号 |
19K15450
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
足立 寛太 岩手大学, 理工学部, 助教 (50823879)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 窒化ガリウム / 共振周波数緩和 / ホッピング伝導 / 超音波共鳴法 / 内部摩擦 |
研究実績の概要 |
圧電半導体である高抵抗GaNは高温環境下においてホッピング伝導が生じ,非デバイ型の共振周波数緩和を引き起こす.本研究では,音響的手法を用いて高抵抗GaNのホッピング伝導の特性を調べることにより,非デバイ型共振周波数緩和の発現機構を解明することを目的としている. まず,薄板形状の高抵抗GaN試料に対して,室温~200 ℃の温度域で生じるこの緩和現象を精度良く測定するために,小型電気炉と三点支持型超音波共鳴法を組み合わせた高温用超音波共鳴法システムを構築した.そして,このシステムを用いて,様々な振動モードの共振周波数とそれに付随する内部摩擦の温度依存性を測定した.結果として,高抵抗GaNはホッピング伝導に起因して主に4つの内部摩擦ピークを示し,この共振周波数緩和は複数の緩和時間を持つ非デバイ型緩和であることを確認した.これらのピークはそれぞれ大きくオーバーラップしており,エネルギー励起の大きな光学的手法では明確に観測することが難しいことが明らかとなった.また,内部摩擦ピークに対応して共振周波数の顕著な変化も観測され,この緩和現象が試料の圧電特性にも関係していることが示された.さらに,アレニウスプロットから各内部摩擦ピークの活性化エネルギーを算出した結果,電子のホッピングの活性化エネルギーのオーダーとなり,今回計測した共振周波数緩和がホッピング伝導に起因していることが確認できた.また,それぞれの活性化エネルギーの差は非常に小さいことから,高抵抗GaNのホッピング伝導は可変領域ホッピング伝導であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高温用超音波共鳴法システムを構築し,高抵抗GaNの多数の共振周波数に対して温度依存性を測定することができた.その結果から,緩和現象における内部摩擦変化の特性やホッピング伝導の活性化エネルギーに関して知見が得られた.以上より,当初の計画通り,おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,算出した活性化エネルギーを基に,ホッピング伝導に関連するエネルギー準位などを明らかにしていく予定である.また,高抵抗GaN以外の材料に対しても測定を行い,非デバイ型共振周波数緩和に対する圧電特性の影響を調べる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたよりも低い金額で試験片を準備することができたことに加えて,国外の学会に参加しなかったため,当該助成金が発生した.翌年度は主に,高出力圧電振動子等の消耗品や,研究成果発表を行うための費用に助成金を使用する予定である.
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