チップサイズの酸化亜鉛(ZnO)微小共振器の実現に向け、励起子が比較的長い時間存在できる高品質なZnO単結晶を光の波長程度の厚さまで薄くし、それを近紫外線の反射特性に優れる誘電体分布ブラッグ反射鏡(DBR)により挟みこむトップダウン方式プロセスを開発した。活性層は、励起子の寿命を悪化させる非輻射再結合中心注(貫通転位、空孔型欠陥、不純物等)が少ない水熱合成ZnO単結晶基板を研磨薄膜化することにより作製した。DBRは、紫外線波長域で吸収損失が少ないシリカ(SiO2)とジルコニア(ZrO2)の組み合わせを採用し、プラズマダメージが少ない反応性ヘリコン波励起プラズマスパッタ法(R-HWPS法)により作製した。その結果、ZnO活性層への欠陥誘起を抑えるとともに、平滑な界面を有する薄膜周期構造を実現でき、高い反射率と広い反射帯域を有するDBRを堆積できた。チップサイズ(10x5 mm^2)のZnO微小共振器を作製し、室温での角度分解フォトルミネッセンス測定(励起スポット径80 um、弱励起条件)により、ZnO微小共振器の発光エネルギーの観測角度依存性を調べた。ZnO微小共振器の発光エネルギーは角度依存性を示し、そのエネルギー分散は計算により求められた共振器ポラリトンの下枝のエネルギー分散とよく一致した。共振器ポラリトンが励起直径80 umという比較的広い領域において観測されたこと、さらに微小共振器の面内(10x5 mm^2)の至る場所で観測されたことは世界初の成果であり、電流注入型ZnOポラリトンレーザ実現の下地が整った。さらに、ZnOとTYPE-IIヘテロ接合を形成できるp型NiO層をR-HWPS法により形成し、pn接合を有する電流注入型ZnO微小共振器を試作した。電流注入型ポラリトンレーザ構造の電流-電圧特性にはダイオードのオンオフを示す整流特性が確認された。
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