研究課題/領域番号 |
19K15459
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
村岡 道弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (10785554)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ガスハイドレート / キネティックインヒビター / 一方向凝固 / 阻害剤 / 核形成 |
研究実績の概要 |
従来の動的ハイドレート生成阻害剤(Kinetic Hydrate Inhibitor, KHI)の実験的研究では、KHIの核形成阻害効果と成長阻害効果を分離して評価できていない。また、KHIの阻害作用メカニズムに関しては分子動力学的手法による研究が増えているが、実験結果との比較は定性的な説明に留まっている。この原因は、詳細に比較できる実験データが、現状、不足しているためと考える。これらの問題解決のため、申請者は、KHIについて簡易な性能評価手法を提案する。本研究では、この評価手法により、各種KHIの効果ランキングを作成することで、効果指標の世界標準化を実現する。また、未解明であるKHIの作用機構を解明する。 本研究の目的は、結晶成長学的な観点からKHIのハイドレート生成阻害機構を明らかにし、有効なKHIのスクリーニングの効率化を達成し、新規KHIのデザインを見出すことである。これにより、新規KHI開発の飛躍的加速を達成する。 本年度は、核形成阻害作用を評価する新規装置を試作した。また、成長抑制作用については各種のKHIを申請者が開発した阻害効果評価法により評価し、成長阻害効果ランキングを作成した。これにより、ガス生産現場において有望なKHIを検討した。また、効果的な幾何学的形状を持つKHIを検討した。この結果、各種の阻害剤は特有の臨界成長速度を持つことを特定した。この成果は、国際雑誌に投稿中である。 ガスハイドレートはガスの輸送、エネルギーの貯蔵、冷媒への活用が研究されている。KHIはこれらの応用における結晶制御法として用いることができ、さらに既存の天然ガスや石油生産パイプラインにもこの成果は活用できるため、グリーンイノベーションに資する波及効果が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
核形成阻害作用を評価する新規装置を試作した。本装置により、ハイドレートの核形成頻度を評価する予備実験を実施し、データを取得することに成功した。また、成長抑制作用については各種のKHIを申請者が開発した阻害効果評価法により評価し、成長阻害効果ランキングを作成した。これにより、ガス生産現場において有望なKHIを検討した。また、効果的な幾何学的形状を持つKHIを検討した。この結果、各種の阻害剤は特有の臨界成長速度を持つことを特定した。この成果は、国際雑誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新規核形成評価装置を用いて、各種KHIの核形成阻害効果ランキングを作成する。また、成長阻害作用については、初年度に特定した有望なKHIの濃度cと界面過冷却度の関係の高精度データを蓄積する。これにより、Raymond and Devries(1977)が、氷と動的阻害剤の系において提案したモデル式と比較し、成長阻害メカニズムの解明を試みる。 核形成阻害効果について、有望なKHIの濃度cと過冷却度に対する核形成頻度を精密に評価したデータを蓄積する。これにより成長阻害効果のメカニズムをヒントに核形成阻害効果のメカニズム解明を試みる。阻害メカニズムが解明できれば、有望なKHIの効率的選定、デザイン等が可能になり、新型KHIの開発が加速化できると期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に、核形成頻度評価装置を試作した。 次年度は本装置と一方向凝固装置を用いて、キネティックインヒビターの効果測定を実施する。この実験における、薬品、光学ガラス等の消耗品、および光学機器等について、次年度使用額を用いて購入する。
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