研究課題/領域番号 |
19K15466
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
吉田 周平 近畿大学, 理工学部, 講師 (10632606)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ディジタルホログラフィ / 圧縮センシング / 3次元計測 / ホログラフィ / デジタルホログラフィ |
研究実績の概要 |
ディジタルホログラフィは干渉縞の数値解析により,物体の詳細な3次元構造を可視化できる優れた計測技術であるが,他の計測技術と同様に標本化定理の制約を受ける.本研究では,標本化定理の制約を超える効率的なサンプリングが可能な圧縮センシングの方法論を,ディジタルホログラフィの再構成アルゴリズムに適用する.これにより,高分解能で耐ノイズ性能が高い3次元計測を実現するとともに,未知現象解明のための基盤技術の創造を目指す. 具体的なテーマとして,測定過程のモデル化と再構成アルゴリズムの実装および実験による検証に取り組んだ.本研究で提案する再構成アルゴリズムは,干渉縞の周波数フィルタリングと,物体光の伝搬および参照光との干渉の過程を線形変換として定式化したアルゴリズムである.物体光がある種の基底ではスパースになるという仮定を置くことで圧縮センシングを適用し,高調波成分の特徴抽出を行う.再構成アルゴリズムとして,凸最適化手法の一つである高速反復縮小閾値アルゴリズムを採用した.この手法により,従来は周波数フィルタで失われていた帯域を含めて物体光を再構成できることをシミュレーションおよび実験により実証した. オフアクシス光学系を想定したシミュレーションでは,従来のフーリエ変換法では困難であった高解像度の物体光の再構成を実証するとともに,実験でも同様に提案手法が有効であることを確認した.これにより,提案手法によりシングルショットで高解像度の光波計測が可能であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究初年度である本年度は,測定過程のモデル化と再構成アルゴリズムの実装および実験による検証に取り組んだ.本研究で提案する再構成アルゴリズムは,干渉縞の周波数フィルタリングと,物体光の伝搬と参照光との干渉の過程を線形変換として定式化したアルゴリズムである.この線形変換の下で,物体光の全変動のL1ノルムを最小化することで,これまでのフーリエ変換法では困難であった高解像度の光波計測が可能であることをシミュレーションと実験により示した.解像度テストターゲットを用いた実験では,入射角が浅いオフアクシス光学系でも,比較的解像度の高い物体光を再構成できることを実証した.以上の結果より,提案手法を用いることで,シングルショットによる高解像度の光波測定が可能となった. また,より応用的なテーマとして,圧縮センシングに基づいたディジタルホログラフィの粒子追跡速度計測法への応用にも取り組み,マイクロ流れの3次元計測にも成功した.粒子追跡速度計測法では,流路に混入したトレーサー粒子を追跡することで,流速を測定する.本研究では粒子追跡速度計測法にディジタルホログラフィを適用することで,単一のホログラム画像から3次元の粒子位置を特定が可能である.加えて,粒子分布がスパースであることを前提に圧縮センシングを適用することで,より精度の高い測定が可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた成果を元に,次年度以降はより応用的なテーマに取り組む.本年度は解像度テストターゲットを用いた実証実験を行ったが,より実際的な状況を想定し,複雑な位相分布を有するサンプルを対象に,提案手法の有効性を検証する.これにより,バイオイメージングをはじめとした計測分野への応用可能性を探る. また,提案手法を用いた粒子追跡速度計測法をより発展させ,簡便な光学系により複雑な3次元マイクロ流れを高精度で測定可能な手法を確立する.これにより,光路の分割の必要がないシンプルなインライン光学系による,シングルショットでの3次元粒子分布の特定を可能とする.
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