研究課題/領域番号 |
19K15467
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研究機関 | 大分工業高等専門学校 |
研究代表者 |
田中 大輔 大分工業高等専門学校, 電気電子工学科, 准教授 (20643729)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 離散双極子近似法 / 光渦 / 局在プラズモン共鳴 / サブシェル構造 |
研究実績の概要 |
2年目となった2020年度は独自に拡張したddscat(DDAシミュレーションソフト)を用いたサブシェル構造の光学シミュレーションを実施した。励起光源に光渦を採用し、そのトポロジカルチャージと入射偏光状態の違いが励起される局在プラズモン共鳴にどう影響するのかを明らかにした。具体的にはトポロジカルチャージを4、3、2、1、-1、-2、-3、-4、入射偏光を右回り円偏光、左回り円偏光、直線偏光、とそれぞれ設定し、コアにはシリカ球、シェルには金キャップを設定したサブシェル構造の可視・赤外領域の吸収・散乱スペクトルおよびピーク波長での共鳴モードについて調査した。その結果、入射光の電場成分に対して構造が対称な場合には、トポロジカルチャージ(軌道角運動量)と偏光状態(スピン角運動量)から励起モードの次数が予想できること、四重極子型の共鳴がもっとも励起効率が高くなること、電場成分に対して非対称な場合にも高次モードが励起可能なこと、などを明らかにした。研究計画当初の目的である「ねらった極数の局在プラズモン共鳴を効率的に励起可能なベクトルビームは如何なるものか?」を明らかにすることができた。並行してサブシェル構造の作成や分光測定を行い、ポリスチレン球表面に金属と誘電体の多層構造を積層した構造の作成が可能となった。また、このナノ構造の光学特性がプラズモンハイブリダイゼーションから説明可能であることもわかった。 これらの成果について国内学会(応用物理学会,プラズモニクスシンポジウム)2件,国際学会(SPIE Photonic West)1件(+査読付きのProceedings一報)でそれぞれ報告した(すべてオンライン)。また、非対称なコアシェル構造の作成プロセスと光学特性についてまとめ、論文投稿し、アクセプトされた(査読付き)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の目的であった「ねらった極数の局在プラズモン共鳴を効率的に励起可能なベクトルビームは如何なるものか?」という問いに対し、トポロジカルチャージ(軌道角運動量)と偏光状態(スピン角運動量)の計算から四重極子型を励起することで効率が最大となる、という結論を導き出すことができたから。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は①独自に拡張したddscatを用いてレーザ設計を行う。具体的には、サブシェル構造の発光特性、特に指向性を有する発光を目指し、励起モードごとの発光特性のポーラープロットと構造の関係を明らかにし、所望するレーザ構造の設計を行う。②実験的にサブシェル構造の光渦励起時のプラズモン由来に光学特性を調査する。具体的には、昨年度の前倒し請求で購入した空間光位相変調器によりトポロジカルチャージを指定した光渦をガラス基板状に固定したサブシェル構造に入射し、各入射条件ごとに消光スペクトルを測定する。得られた実験結果と計算結果と比較し、光渦励起局在プラズモン共鳴に由来する工学特性について考察する。
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