本研究では可視光域で機能する3次元ナノコンポジットメタマテリアルを提案し、その実現を目的として構造設計、ナノ粒子インクを用いた作製、光学特性の評価を試みた。 (1) 様々な形状のナノコンポジットメタマテリアルを実現 ナノ粒子で構成されるメタマテリアルは、構造的には3次元的なドット絵のようなものであるが、100ナノメートル以下の寸法精度が必要であることから従来技術ではそのような構造を得ることは難しかった。本研究では、ナノインプリント(ホットエンボス)技術とナノ粒子インクを用いた印刷技術を融合したナノ印刷プロセスにより、その複雑な構造を形成することに成功した。直径100ナノメートルのディスク形状、幅50ナノメートルのワイヤー形状、約20ナノメートルのギャップを含む分割リング共振器形状などを対象に、ナノ粒子インクの種類、焼成条件によりどのように構造が形作られているかを評価した。光学特性の測定は、構造層の屈折率が測定できる干渉計を構築し位相変化の観測はできたが、定量的なデータ処理段階で時間を要した。そのため、今回は透過率、反射率、吸収、散乱の各スペクトルの測定により光学特性を評価した。このようにして構造データと光学特性の相関データを得た。 (2) 応用素子の探求 偏光素子の応用研究では、実験値と計算値の差異について調べた。有機物で保護されている銀ナノ粒子が並んでいる状態をモデル化したものと、その構造を構成している銀のダンピング周波数を変化させた状態をモデル化したもので検討した。結果的として後者の手法により、形成された構造の電気伝導度はバルクのそれよりも低くなっていることからダンピング周波数に反映してモデル化し、それにより得られる光学特性が実験値と良く一致することを示すことができた。これらの知見は本技術による他の応用研究の設計においても有用である。
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