研究課題/領域番号 |
19K15474
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
相澤 直人 東北大学, 工学研究科, 助教 (70707033)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中性子核反応 / 中性子スペクトル / 中速中性子 / 原子炉実験 / 加速器駆動システム / 核変換 |
研究実績の概要 |
様々な中性子スペクトル場を生み出すことによる中性子核反応の制御を究極の目標に据え、本研究では加速器駆動システムにおいて中速中性子に対する核変換実現性を明らかにすることを目的として以下の項目を実施した。 1.原子炉実験に先立ち、中速中性子領域にて中性子核反応の感度を持ち、かつ実験測定において核反応に伴う放射化反応率が測定可能な実験試料の選定のための調査を行った。はじめに、核種の物理的特性を踏まえて候補となる試料を検討した。その後、候補試料データを基に、予定する原子炉実験体系に基づく数値解析シミュレーションを実施し、中速中性子核反応測定のための実験試料としてIn、Ta、Cu、Wを選定した。 2.京都大学臨界集合体実験装置KUCA A架台とFFAG加速器を組み合わせた、核破砕中性子源による加速器駆動システム実験体系において、中速中性子領域の中性子核反応を測定する原子炉実験を実施した。原子炉実験では、ポリエチレン減速高濃縮ウラン燃料領域とアルミニウム使用低濃縮燃料模擬領域からなる炉心に対して、実験試料をアルミニウム使用低濃縮燃料模擬領域に設置し、臨界条件1ケース・未臨界条件2ケースに対して中性子照射を行った。2019年度は、主に(i)対象実験体系における選定試料による中速中性子核反応の実験測定の可否、(ii)未臨界度(中性子増倍率)に対する中性子エネルギーへの影響の有無、の2つに着目した。(i)に関しては、選定した4つの実験試料によって本実験体系で中速中性子核反応に基づく放射化反応率を測定可能であることが確認できた。(ii)に関しては、測定データを元に、熱中性子に大きな感度を有する金の放射化反応率を基準とした実験試料の放射化反応率を求めたところ、一部の実験試料において未臨界度に対する依存性が見られ、中速中性子スペクトル場が未臨界度の影響を受ける可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた「選定した実験試料による中速中性子核反応の実験測定の可否」、「未臨界度(中性子増倍率)に対する中性子エネルギーへの影響の有無」、に関しては、順調に実施・確認することができた。 一方で、当初計画では実験に先立って、様々な減速材材料を用いた仮想原子炉実験体系に対する数値解析を実施し、体系の違いに対する中性子スペクトル変化に関する知見を蓄積する予定であったが、実験の予定等を踏まえて実験測定に使用する試料の詳細検討のための数値解析を優先した。 加えて、数値解析による実験結果の分析を実施しているが、数値解析結果と実験結果との整合性が取れない結果が一部に見られていることから、さらなる詳細分析を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の実験結果に対する数値解析による分析を進めるとともに、2019年度に予定していた様々な減速材・反射材材料を用いた仮想原子炉実験体系に対する数値解析を進め、今後2年間に実施する実験体系の検討を行う計画である。また、2019年度の実験結果において示唆された未臨界度に対する中性子スペクトル場への影響に関して、減速材・反射材材料の検討に加えて、炉心位置による検討を行い、中速中性子場の創成に適した条件のサーベイを実施することを計画する。 原子炉実験に関しては、前述の実験体系の検討を踏まえ、2019年度の実験体系とは異なる中性子特性を有する体系において、中速中性子核反応測定を実施し、体系ならびに未臨界度に対する中速中性子場への影響を明らかにする計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費にて安価な移動手段が使用できたこと、実験試料を精査したことによる物品費の減少が、次年度使用額が生じた理由である。 これらの差額は、次年度に旅費・物品費として使用予定である。
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