研究課題/領域番号 |
19K15476
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三津谷 有貴 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (70784825)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | X線CT / 圧縮センシング / 再構成アルゴリズム |
研究実績の概要 |
当該年度は、直線軌道X線CTの数学的最適化手法を用いたアルゴリズムの開発・改良を実施し、また実験に供するX線検出器の開発を実施した。
直線軌道CTとは、X線源の広がり角度を利用し、直線的な線源の動きによって投影画像に角度がつくことを利用し、大型構造物など従来の回転軌道が適用できないケースでも断面像再構成を実施する手法である。本研究では、直線軌道CTにおける角度欠損を補償する方法として、圧縮センシングに基づくアルゴリズムを新しく開発している。圧縮センシングCTは、断面画像の微分画像がスパース性を有する性質を利用し、少ない投影角度および投影数からでも完全な再構成を行うアルゴリズムである。本研究では特に、直線軌道CTのために、投影軌道に応じた画像差分を取り最適な重み付けを行うDirectional Differenceという手法を新しく提案している。
当該年度の成果としては、高ノイズ状況下で正しく再構成を実施するにあたり、X線源の広がり角度による再構成精度の検証を実施した。圧縮センシングの再構成アルゴリズムとしてはADMMを用いた。投影データに対してガウシアンノイズ1%を付与した結果において、X線源の広がり角度を80度から120度まで変化させて再構成を行った。その結果、広がり角度を大きくすることによって再構成精度が向上し、エッジ欠けが解消されることが分かった。また、投影回数を多くすることによっても再構成精度が向上することが分かった。また、モンテカルロ法で作成した投影データでも再構成を行うことができた。これによって、今後の実験による実証を行うにあたっての基礎的なデータを取得することができた。 また、フォトダイオードアレイおよびシンチレータを導入しX線検出器としての構築した。特に、検出器を制御するFPGA回路の設計を実施した。今後はこの検出器を用いた実験実証を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画として、再構成のための最適化問題の定式化および、その解法・アルゴリズムを数値計算やモンテカルロ・シミュレーションによって検証することとした。その際にX線広がり角度や投影回数、ノイズレベルによって再構成が正しく行われるかどうかを評価することとした。また、実験体系の構築を進めること、特にX線検出器アレイの開発を実施することを計画した。 当該年度の進捗としては、再構成アルゴリズムの開発を実施しており、ノイズレベルやX線広がり角度、投影回数を変化させた条件における再構成精度の検証を実施した。また、モンテカルロ・シミュレーションによる投影データを用いて、再構成アルゴリズムの検証を行った。また、X線検出器の導入と制御系を構築し、今後の実験に供することのできるように開発を行った。以上より、当初計画に沿った順調な進捗となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針としては、引き続き研究計画に従って進行する。具体的には、次年度はX線検出系の構築を進める。精密ステージ上に検出器を搭載し、直線軌道投影を実際にできるように制御系を構築する。それを用いて、最終年度までに実験による実証を目指す。 再構成アルゴリズムについてはおおむね開発が完了しているが、実験データのノイズ状況に応じては投影画像からのノイズ低減アルゴリズムの実装を検討する。特に近年ではCT再構成におけるニューラルネットワークによるノイズ除去が発展してきており、そのような手法をハイブリッド的に用いることを検討する。
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