研究課題/領域番号 |
19K15485
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
阪田 義隆 北海道大学, 工学研究院, 助教 (10754236)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地中熱 / 地下水 / 気候変動 / 地球温暖化 / 地表面熱収支 / 透水係数 / 井戸揚水 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
2020年度(2年度目)では,気候変動下の都市における地中熱利用システムの長期予測評価法確立を目的とし,寒冷地の代表として選定した札幌市を対象に,都市スケールでの地下熱・地下水連成輸送シミュレーションを行った。 解析モデルは,札幌扇状地を囲む10kmスケ―ルであり,水理地質基盤までの地質時代ごとに5層に分類したユニフォームドグリッドモデルにて作成した。各メッシュの透水係数は応募者が特許を有する確率加重平均法によって推定し与えている。 地下水を供給する境界条件として,地表面に蒸発散,表面流出を簡易水収支を考慮した涵養量を与えた。また,札幌市を貫流する豊平川に沿って,日平均で変動する河川水位を条件として与えることで,地下水の涵養源・流出源とした。その際,記録以前の河川水位は,記録水位と気象データの関係から非線形相関モデルを別途作成し予測することで与えた。更に,自然地下水流れに加え,市街地における人口的な地下水流れを再現するため,揚水井戸をメッシュ・深度毎に換算し,域外への流出量として与えた。熱輸送境界は,上記気象データと前年度に開発した一次元熱収支モデルを用い,市内のエリア毎での異なる被覆条件に対する熱収支フラックスを計算し,与えた。この熱フラックスは,被覆が裸地から舗装面に被覆されるエリアで,特に上昇が認められる可能性を示した。また河川に沿っても水温境界を与えた。その際,記録以前の河川水温は,河川水位と同様,非線形相関モデルを同様に作成し,推定して与えた。 解析期間は,1961~2010年の50年間とし,都市スケール,地下水熱輸送計算での高負荷計算に耐えうる計算環境に基づき,計算を実行した。その結果,河川からの涵養区間に沿って熱プルームが市街地に向かう傾向や,井戸や地下鉄に沿って水位が低下する特有の傾向とともに,札幌市内の深度別での地下温度とその長期変遷を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度では,当初の研究計画通り,都市スケールにて,自然・人口双方の地下水流れ環境下での地下熱輸送モデルを作成し,50年間における計算を実行し,札幌市内における長期的な地下温度の分布と変遷を明らかにすることができた。この計算結果の評価にあたっては,札幌市内に配置された既存観測井戸にて,観測を実施して得られる,地下水温の季別プロファイルをとの比較により行う予定であった。しかしながら,コロナ禍にて,立ち入り許可の制約や学生などの補助員の手配が予定したどおりに実行することができず,計算の再現性を評価するための十分な観測データを得ることができず,モデルの十分な修正に至ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
気候変動下における地中熱システムの評価手法として,2019年度(初年度)には,温暖地の代表として東京,寒冷地の代表として札幌における,気候変動に基づく,地下熱・地下水輸送モデルによる将来地下温度プロファイルによる,地中熱システムの効率性予想手法を開発した。2020年度(2年度目)には,札幌市において,都市スケールでの地下熱・地下水連成移動モデルを作成し,河川水からの地下水供給,市街地における地下水流出,エリアごとでの被覆変化の違いによる熱フラックスを与え,都市スケールでの,地下温度分布とその変遷を明らかにした。2021年度(3年度目)では,札幌市内における観測井戸から地下水温データを現地収集し,これまでのデータと併せて,水位,水温の再現計算のチューニングを行うことで,計算精度を高めた後,気候変動に伴う予測条件を境界に与えることで,将来的な地下温度分布の予測を行い,地中熱システム導入の長期ポテンシャル評価を行う。最終的には,これら成果をとりまとめ,国内外の学術誌に発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は,コロナ禍にて,立ち入り箇所の制約や,学生などの補助員の手配が予定通り実行できず,解析モデルを検証するための現地調査ができなかった。2021年度において,差額予算は,現地調査を行う際の交通費や,補助員(学生)の人件費に用いる。
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