本研究では、有機炭素分を含む難処理銅鉱石の処理プロセスの確立を目的に、浮選、高温高圧浸出、溶媒抽出法を組み合わせた銅回収プロセスの開発を試みた。 2019年度の研究では、有機炭素を含む銅鉱石ならびに浮選により銅成分を濃縮した銅精鉱の生産条件を最適化し、2020年度の研究では、浮選により濃縮された銅精鉱を高温高圧浸出することで、銅を選択的に浸出分離する条件を見出した。2021年度(当該年度)は、前年度までの一連の研究により得られた浸出液を対象に、溶媒抽出試験を実施した。溶媒抽出試験では、銅を選択的に抽出可能な有機溶媒を利用し、O/A比、抽出段数、抽出時間、溶液pH、添加剤の影響について調査を行った。その結果、浸出液のpHを上昇させることで銅の抽出率が向上する傾向がみられ、pHを2.5まで上昇させることで添加剤の有無にかかわらず銅抽出率は約99%まで上昇することを確認した。また、逆抽出において、O/A比の影響を調査した結果、O/A=5で添加剤を加えた条件では銅濃度42.07 g/L、鉄濃度427 ppmの不純物量が少なく、電解採取可能な銅溶液が得られることが明らかとなった。なお、溶媒抽出全体の銅回収率は79%程度となった。加えて、逆抽出後有機相の溶媒抽出工程への再利用を5回繰り返した結果、有機相を5回繰り返しても銅抽出率や銅逆抽出率には変化なく、繰り返し再利用可能であることが明らかとなった。 以上の結果から、浮選、高温高圧浸出、溶媒抽出を組み合わせることで、既存の選鉱プロセスでは処理が困難であった難処理銅鉱石から、銅を回収できるプロセスを構築した。
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