研究課題/領域番号 |
19K15488
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
高須 大輝 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (00833922)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 化学蓄熱 / 低温排熱回収 |
研究実績の概要 |
化学蓄熱の実用化を目指す上で、材料の低い反応性や長時間の繰り返し反応耐久性等に課題が残されている。この問題解決のため、これまでの研究開発では、材料形状や粒子径、導入担体、添加剤の検討等が盛んに行われてきた。しかし、十分に材料特性が改善されてきたとは言い難く、抜本的な改善が必要である。そこで、本研究では錯体配位子制御を利用した、化学蓄熱材料の反応特性改善を実現し、新規化学蓄熱材料の開発を目指す。 塩化カルシウム及び塩化マグネシウムを用いて、アンモニア吸収・脱離反応の基本的反応特性の評価を実施した。まず、実験に先立ち、これらの材料は共に潮解性であり、また200℃程度の温度で分解が生じるため、詳細な前処理条件の検討を行った。この検討により材料の反応性が再現よく評価可能であることを確認するに至った。その上で、両材料について各温度や圧力下での基本的反応特性の評価を実施し、化学蓄熱材料として基礎的なデータを得た。 塩化カルシウムについては、いくつかの配位子導入を行い、その反応性を比較することで反応特性の向上を確認するに至った。特に塩化カルシウム一水和物は室温下でのアンモニア吸収実験において、初期10分間の吸収量が無水和物と比較し2.8倍と高い性能を示した。これらの結果は、塩化カルシウムへのアクア配位子導入によって、材料のアンモニア吸収反応の活性化を示唆し、錯体配位子制御による材料の反応特性改善による新規化学蓄熱材料の開発に有用な情報を獲得することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
塩化カルシウム及び塩化マグネシウムを用いて、アンモニア吸収・脱離反応の基本的反応特性の評価を実施した。これに加え、塩化カルシウムについてはいくつかの配位子導入を行い、その反応性を比較することで、反応特性の向上を確認した。また、塩化マグネシウム材料について、従来の材料より高い反応性を有する材料を開発した。これらの材料は低温排熱回収を目的とする化学蓄熱として有用である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は材料の様々な条件下におけるアンモニア吸収・脱離反応の反応特性評価を進めるとともに、反応前後における試料の結晶相変化や格子定数の算出、比表面積や細孔容積評価を行い、試料の基礎物性や異種配位子導入による反応活性化の機構解明も同時に行う。また、材料のペレット化及びその化学蓄熱材料としての性能の評価についても実施する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
塩化カルシウム及び塩化マグネシウムを用いて、アンモニア吸収・脱離反応の基本的反応特性の評価を実施した。実験に先立ち詳細な前処理条件の検討を行い、その上で両材料について各温度や圧力下での基本的反応特性の評価を実施したことで、基礎的なデータでありながら従来確認されなかった研究成果を得るに至った。そのため本年度ではこの基礎的データの収集を中心に行い、本来予定していた装置の改修費用を次年度へ繰り越すこととした。本年度では、試料の基礎物性や異種配位子導入による反応活性化の機構解明も同時に行う。そこで、各配位子導入試料の調整や分析に必要な機器・分析費用に次年度の予算を用いる。また、ペレット化及びその化学蓄熱材料としての性能を評価についても実施するため、材料大量合成に必要な装置についても購入を進める。
|