研究実績の概要 |
最終年度は,種々の溶液に浸漬させて変質反応促進を施したNa型ベントナイト(変質ベントナイト)の膨潤特性および透水性に及ぼす化学的要因(溶液種の違い)の影響を重点的に調べた.そして,ベントナイト系材料(Na型ベントナイトと珪砂の混合材料)に対して,超長期使用による化学的変質(ここでは,地下水中の化学成分の作用のことを言う.)によって,ベントナイト中のモンモリロナイトの一部分が変質した場合,その変質の程度に応じて透水性がどのように変化するのかを検討した.得られた結果を要約すると,次の通りである. 1) 溶液に浸漬させたベントナイトの膨潤圧および透水係数は,いずれの供試体もNa型ベントナイトに比べて膨潤圧は低下,透水係数は上昇するとともに,それらの大きさは浸漬させる溶液の種類によって異なることがわかった.また,これらの差をXRDパターンにおけるモンモリロナイトの12.4Åの回折線と関連付けさせて考察した. 2) 変質ベントナイトを様々な割合で置換した供試体は,変質ベントナイト置換率の増加に伴い,透水係数は上昇する傾向がみられるが,置換する変質ベントナイトの種類によってその様相は異なることがわかった.変質ベントナイトを混合することによる化学的要因の影響の度合いを元素マッピング分析により調べ,その結果と試料の透水性との関係について考察した. 3) 上記1), 2)の結果から,地層処分において,高アルカリ間隙水中のK+や,地上から運び込まれる酸素と支保工や岩盤内の鉄分との反応によって生じる金属イオン(Fe3+)や海水系地下水に含有する金属イオン(Mg2+)は,ベントナイト系材料の膨潤・透水性能を大きく劣化(膨潤圧の低下,透水係数の上昇)させる要因になり得るため,これら陽イオンの存在にも十分注意する必要があると結論付けた.
|