研究課題/領域番号 |
19K15492
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
濱中 晃弘 九州大学, 工学研究院, 助教 (20758601)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 石炭地下ガス化 / UCG / AE計測 / ガス化制御 / 未利用エネルギー資源 |
研究実績の概要 |
本年度の研究計画通り,九州大学において石炭供試体の温度上昇によるAE計測実験を実施した。本実験では,北海道で操業中の露天掘り石炭鉱山から提供していただいた石炭試料を1辺20 cm程度に成形し,石炭ブロック供試体の中央に設置したカードリッジヒーターの温度を,温度制御盤を用いてカートリッジヒーターの温度や温度上昇速度を変化させることで,石炭ブロック内の温度変化やAE発生数などを計測した。また,複数のセンサーから得られたAE波形データを用いて震源標定解析を行い,熱電対で得られた石炭供試体の温度分布と比較することで,AE震源と温度分布の関係に関して検討を行った。 一連の実験より,石炭において温度変化がある場合に多数のAEが発生しており,AE計測センサーと熱源の距離が近いほどAEイベント数が多かった。これより,複数のセンサーを用いてAEイベント数を比較することで,温度変化が生じている場所がある程度特定可能であると考えられる。また,50~150℃の温度帯および400℃以上において多数のAEが発生しており,特に400℃以上で温度変化がある場合におけるAEイベント数の方が多いことが分かった。さらに,AEの震源標定解析結果を行った結果,400℃以上の温度変化の著しい実験後半において震源標定数が多く,その場合において,熱源であるカートリッジヒーターから離れた位置においても震源が標定されていた。これらの結果より,UCG中にAE計測モニタリングを適用することで,石炭の温度変化および高温領域の拡大を捉えることが可能であると考えられる。 また,本年度においては,次年度実施予定の小規模UCG模型実験に供する石炭ブロック試料の採取も併せて実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,UCG中のモニタリングに破壊音(AE: Acoustic Emission)計測を適用することにより,地下のガス化反応領域のモニタリング・制御を目指すものである。初年度である本年度は,カートリッジヒーターを用いた石炭ブロックの加熱実験により,石炭ブロックの温度条件が石炭内で生じるAE活動にどのような影響を及ぼすのかを探ることを主な目的として研究を実施した。 その結果,1)石炭の温度変化がある場合,多数のAEが発生すること,2)AE計測センサーと熱源との距離が近いほど,計測されるAE発生イベント数が多いこと,3)高温領域の拡大に伴い,震源標定されるAE震源の位置が中心の熱源から離れた場所に標定されることが明らかとなった。これらの知見は次年度実施予定である小規模UCG模型実験において,ガス化反応が生じている高温領域をAE計測によりモニタリングすることが可能であることを示しており,さらに,ガス化反応領域を拡大させるため酸化剤の注入条件を変化させた際に,AE計測モニタリングでAE発生イベント数の計測や震源標定解析を実施することで,注入条件を変化させることによる石炭内の高温領域の拡大をモニタリングすることが可能となり,石炭内のガス化反応領域の制御にもつながると考えられる。また,本年度において,次年度実施予定の小規模UCG模型実験に供する石炭ブロック試料の採取も併せて実施しており,次年度の実験を実施する準備はすでに整っている。 以上を総合すると,概ね順調に研究が進んでいると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である,UCG中のモニタリングに破壊音(AE: Acoustic Emission)計測を適用することによる地下のガス化反応領域のモニタリング・制御に関して,より実践的な検討を行うため,小規模UCG模型実験を実施する予定である。本実験では,石炭地下ガス化の小規模な模型実験を一辺20 cm程度に成形した石炭ブロックを用いて実施し,注入剤の注入流量や酸素濃度を変化させて実験を行い,ガス化反応領域を拡大させ,AE活動を促進するための注入条件を探る。以上より,注入条件によるガス化反応領域の制御方法に関する指針を提起する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に研究成果発表や研究打ち合わせのための旅費と次年度、北海道の研究施設で実施する実験に向けた実験の消耗品の購入を検討していたが、新型ウイルス感染症の影響により、一部の出張の見合わせと消耗品の購入の見合わせをすることになった。次年度、感染症の情勢が落ち着き、出張などが可能になった段階で直ちに予定している実験消耗品の購入を含めた北海道の実験施設での実験準備に取り掛かり、今年度使用できなかった経費を含めて使用していく予定である。
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