研究課題/領域番号 |
19K15494
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
村本 智也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (60828284)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 固液二相 / 粘性率 / 粉体 / 流動学 / 地層 / 堆積物 |
研究実績の概要 |
貯留層をはじめとした多孔質媒体の特徴の一つに、その内部にある複雑な幾何形状をもつ空隙を経路として流体を通過させることができるという点がある。つまり、多孔質媒質は水理学的性質(浸透性と貯留性)を有している。その代表例が岩石である。近年、国策の一環で地熱発電におけるエネルギー回収に関する問題に取り組む際、また、高レベル放射性廃棄物地層処分システムの長期安全性を評価する上で、対象となる岩盤の透水・物質輸送特性を詳細に把握する必要性が強調されるようになった。本研究は申請者の所属する研究部門の擁する高精度粘性率測定技術と高精度液体高圧力発生技術を応用し、粘性率と透水係数の相補的な関係を利用した、貯留層の高精度評価を想定した高精度高圧粘度・透水係数同時測定システムを開発することを目的としている。国家標準器でもある重錘形圧力天びんによる高精度流体コントロールシステムを構築することで、先行研究よりも遥かに高精度な測定値が得られると見込んでいる。高温高圧下における透水係数に関する研究に関しては、国内外を問わず数多くの研究例が存在するその一方で、同環境下(一連のプロセス)で粘性率と透水係数の同時測定を試みる例は本研究が初めてである。また、不確かさ評価を含めた、計量学的な観点での透水係数の高精度測定並びにSI単位系にトレーサブルな形での測定は申請者の知る限りでは世界初の試みである。本研究で開発した実験系により、SI単位系にトレーサブルな形で透水係数と求めることが可能となり、信頼性が担保されるような形で地層の透水・物質輸送特性及びEnhanced oil recoveryによる原油や天然ガス等の生産量の評価が可能になると期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度には2020年度の進捗に基づき、細管内を流れる流体の高精度粘性率測定システムの構築を行った。圧力発生器としては重錘形圧力天びんを用いている。重錘形圧力天びんは、ピストンシリンダの有効断面積並びに底面に鉛直下向きの力をかけることによって圧力を発生させる装置である。2021年度はシステム全体の調整を行い、センシングするパラメータの繰り返し性を確認した。また、新たにレーザー式変位センサを導入することで、流速のセンシングを精緻化した。進捗状況は当初に予定していた通りであり、2022年度に透水実験に取り組むにあたって充分な準備が完了している。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度には高精度粘性率測定システムを拡張し、高精度透水係数測定システムの構築を行う。初めに、岩石・粉体試料をセットする為の高圧容器についての検討を行う。現存する流路を拡張することで、粘性率測定から透水係数の測定がシームレスに可能な流路を実装する。この際、高圧下における粘性率の値付けが済んでいるbis(2-ethylhexyl) sebacateをサンプル液体とし、高精度な値を得るための実験系を構築する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の使用計画から大幅な変更は無かった。 実験に必要な装置に係る費用が若干前後した為。
|