貯留層をはじめとした多孔質媒体の特徴の一つに、その内部にある複雑な幾何形状をもつ空隙を経路として流体を通過させることができるという点がある。つまり、多孔質媒体は水理学的性質(浸透性と貯留性)を有している。その代表例が岩石である。近年、国策の一環で地熱発電におけるエネルギー回収に関する問題に取り組む際、また、高レベル放射性廃棄物地層処分システムの長期安定性を評価する上で、対象となる岩盤の透水・物質輸送特性を詳細に把握する必要性が強調されるようになった。本研究は申請者の所属する研究部門の擁する高精度粘性率測定技術と高精度液体高圧力発生技術を応用し、粘性率と透水係数の相補的な関係を利用した、貯留層の高精度評価を想定した高精度高圧粘性率・透水係数同時測定システムを開発することを目的としている。国家標準器でもある重錘形圧力天びんによる高精度流体コントロールシステムを構築することで、先行研究よりも遥かに高精度な測定値が得られると見込んでいる。高温高圧下における透水係数に関する研究に関しては、国内外を問わず数多くの研究者が存在すうその一方で、同環境下(一連のプロセス)で粘性率と透水係数の同時測定を試みる例は本研究が初めてである。また、不確かさ評価を含めた、計量学的な観点での透水係数の高精度測定並びにSI単位系にトレーサブルな形での測定は申請者の知る限りでは世界初の試みである。本研究で開発した実験系により、SI単位系にトレーサブルな形で透水係数を求めることが可能となり、信頼性が担保されるような形で地層の透水・物質輸送特性及びEnhanced oil recoveryによる原油や天然ガス等の生産量の評価が可能になると期待される。
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