本研究では,「間隙水圧変化にともなう開口幅変化,亀裂のせん断滑り,新たな亀裂の進展,進展する亀裂と既存亀裂の相互作用を考慮可能な,地殻内岩石亀裂ネットワークに関する水理-力学連成モデル」の構築に取り組み,EGS型地熱開発時の資源量規模評価や適正利用提案において重要となる“地殻浸透率構造の時空間発展”に関する理解の深化を目的とした。 これまでに,地下岩体へ加圧注水をし,間隙水圧を人工的に変化させたフィールド実験(バーゼル,雄勝,肘折,ニューベリー等)に関する文献レビューに取り組み,亀裂ネットワークの規模,複雑さ,透水構造,微小地震分布,間隙水圧分布といった特徴の定量化とこれらの相関関係の整理を完了した。また,「岩石亀裂ネットワークに関する水理-力学連成挙動」を解析するためのソフトウェア導入を完了し,フィールド実験のレビューで得られた特徴を再現できるよう試行錯誤的に「亀裂の滑り,亀裂の相互作用」を考慮する機能の拡張を進めた。 一方,構築した水理-力学連成モデルの検証に向けて,亀裂分布と亀裂開口幅を制御した亀裂ネットワークサンプルを用いた加圧注水実験を予定していたため,候補となるサンプル作製法(3Dプリンター,レーザー彫刻)に関して事前検討を行った。検討の結果,検証実験には3Dプリンターで作製したサンプルの方が適している可能性が高いことが分かった。 以上,本研究は当初の計画通り順調に進められていたが,急遽,2020年3月1日より科研費指定機関ではない国立研究開発法人へ1年間の転籍出向を命じられ,2020年2月28日で現在の職を辞職することとなった。その結果、応募資格を失ったため,本研究費助成事業について補助事業を廃止することとなった。
|