研究実績の概要 |
これまでに見出している超縮退を起こす四面体型クラスターX10, X20, X35(X: Zn, Cd, Mg)の研究 [Nat. Commun. 9, 3758 (2018)] と同様の方法論を用いて、新たなタイプの超縮退物質を見つけることに成功した。この中には非四面体型クラスターX8が含まれるほか、2次元などの低次元物質における超縮退骨格も存在する。既に過去の実験論文で合成及び単結晶X線構造解析が報告されているものもあり、超縮退物質の実証や材料としての応用に大きく迫る結果が得られたといえる。今年度はこれらの新たな超縮退物質について、数理化学的起源を明らかにするための研究を大きく進めた。その中で、リー代数を用いた数理的アプローチにも着手しており、今後はこのリー代数に基づく力学的対称性理論について深化させていく予定である。
また、こういった金属クラスターをビルディングブロックとして、高次構造体を形成する際の一般原理についても、前年度までに構築した対称適合軌道モデル [Nature Commun. 10, 3727 (2019)] に基づいて明らかにした。具体的には、通常の化学における混成軌道の概念を拡張し、隣接する金属クラスターの対称適合軌道どうしの相互作用を記述することに成功した。この研究成果は、超縮退物質を結晶として取り出し、物性測定による実験実証を行うための理論的基盤を与えるものと考えられる。
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