研究課題/領域番号 |
19K15502
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
石井 陽祐 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80752914)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高圧力 / 電気化学 / 鉄錯体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、酸化還元反応に与える圧力の影響を明らかにすることである。本研究では、主に鉄化合物(鉄錯体、鉄含有鉱物、鉄含有タンパク質)を対象に高圧力環境下における電気化学測定(酸化還元電位測定)の実施を進めている。鉄は宇宙存在度の最も大きな遷移金属元素であり、熱水環境中におけるFe(II)とFe(III)の間の酸化還元反応は原始生命の主要なエネルギー源となっていたと考えられているからである。酸化還元電位は化学反応のエネルギーを定量化するのに役立つパラメータである。酸化還元電位の圧力変化を調べることで、深海の無機分子・鉱物と極限環境生命の相互作用について、エネルギーの観点から理解することを目指した。 1年目の研究では、水溶液系のサンプルを対象に、大気圧~400 MPaまでの圧力範囲で3電極式の電気化学測定を実施するための装置整備を行った。現時点ではセルの気密性やノイズ対策が不十分なために歩留まりの高い実験ができるまでの完成度には達していないが、サイクリックボルタメトリなどの基本的な電気化学測定が行える装置開発に成功した。 この装置を用いて、フェロシアン化カリウム/フェリシアン化カリウムのレドックス反応の酸化還元電位を調べたところ、圧力印加によって酸化還元平衡電位が高電位側にシフトすることが明らかとなった。また本年度は、プルシアンブルーなどの鉄錯体に対しても同様の測定を実施した。測定結果の比較により、酸化還元電位の圧力変化の程度は鉄錯体の種類によって変化することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
水溶液系のサンプルを対象に、大気圧~400 MPaの圧力で3電極式の電気化学測定を行う基本的な装置の作成には成功した。また、この装置を用いて酸化還元平衡電位の圧力依存性を調べる実験にも成功している。 ただし、現在の装置は測定セルの気密性やノイズ対策が不十分であり、歩留まりの高い実験ができるまでの完成度には至っていない。本研究課題を達成するためには、複数のサンプルを対象に、分子構造と圧力応答の関係を比較する必要があるが、実験の歩留まりの低さから、当初計画してたほどの測定数を達成できていない。このため、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
測定の失敗率を低下させ、再現性の高い実験が行えるよう、まずは測定セルの改良を実施する。タンパク質中の鉄錯体など、より多様な構造の分子種を対象とした実験を行うことで、酸化還元電位と圧力の関係に対するより普遍的な理解を目指す。
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