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2019 年度 実施状況報告書

80 nm極端紫外超短パルスを用いた超高速液体光電子分光による光異性化の研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K15503
研究機関京都大学

研究代表者

山本 遥一  京都大学, 理学研究科, 助教 (70837319)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワード液体光電子分光 / 溶媒和電子 / メタノール / 溶媒和ダイナミクス
研究実績の概要

液体メタノールに133 nmの真空紫外パルスを照射し電離させ、生じた電荷に対して溶媒が応答することで溶媒和電子が生成・安定化する様子を液体の光電子分光法によって観測した。パルス照射によって励起された分子のうち14-28 %程度が溶媒和電子を生成した。生成した溶媒和電子の束縛エネルギーは時間とともに溶媒和によって安定化し、その推移は2, 30 psの二つの時定数の双指数関数で表されることが明らかになった。これらの時定数は水の場合に得られている0.3, 1 psと比べて10倍ほど大きくメタノール中では溶媒和の際に大きな構造変化が必要であることを示している。さらに束縛エネルギースペクトルの時間変化を詳細に検討した結果、中心値が15 , 50 psの指数関数で推移する二つのガウシアンの和で表すことができることを見出した。この結果は、平衡状態にあるメタノール溶媒中に大別して二つの電子捕獲サイトが存在することを示唆した。これらの電子捕獲サイトはそれぞれメタノール中の一次元的な水素結合ネットワーク欠陥中のOH基に捕獲された不完全な溶媒和構造と周囲を4つ以上のOH基に囲まれた完全な溶媒和構造に対応すると推測された。さらに、両ピークの強度推移から、二つの電子捕獲サイト間で占有数が25 psの時定数で移動することが明らかになった。この結果は分子全体の回転を伴う運動によって溶媒和に参加するOH基の数が変化することに対応していると推測された。これらの結果をまとめJournal of Chemical Physicsに投稿した。
また、光異性化反応のモデルケースであるcis-stilbeneについて気相の光電子分光実験を行い、サブピコ秒で進行する反応を観測した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

溶媒として用いるアルコールの高速な応答について液体光電子分光と真空紫外光源を組み合わせることによって研究し、新たな知見を得ることができた。気相においてではあるが、異性化反応のモデルケースであるcis-stilbeneについても、同様の光源を用いて実験を行っており、液相での異性化反応の研究へと移行する準備を着々と進めている。
一方で、光源の短パルス化、短波長化については当初の計画とは異なる方針をとる必要が出てきたため、準備段階である。
以上のように、光源開発は準備段階であるが、溶媒のダイナミクスや気相分子の光異性化反応については研究の進捗があったため、おおむね順調であると判断した。

今後の研究の推進方策

光源の短パルス化について、当初計画では希ガス中での自己位相変調による広帯域化と分散鏡による分散補償を利用する予定であったが、空間的な制約があり実現が困難であった。そこで、より簡便に自己位相変調を引き起こす非線形媒質として複数の1 mmのガラス板を利用する手法を取り入れる。高強度のパルス光を用いる場合には緩やかに集光しなくてはならないため数mの距離が必要となるが、円筒型のレンズを用いて一方向のみを集光することで短い焦点距離のレンズを使用してコンパクトに自己位相変調を引き起こすことが可能であることが報告されている。来年度は上記手法を用いて光源の改良を早期に進める方針である。

次年度使用額が生じた理由

本年度は光源開発を主に行う計画であったが、予定を変更し来年度に行うこととしたために使用額が少なくなった。来年度以降、光源開発の必要物品を購入するために使用する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Solvated electron formation from the conduction band of liquid methanol: Transformation from a shallow to deep trap state2019

    • 著者名/発表者名
      Ayano Hara, Yo-ichi Yamamoto, and Toshinori Suzuki
    • 雑誌名

      The Journal of Chemical Physics

      巻: 151 ページ: 114503

    • DOI

      10.1063/1.5116818

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Binding energy of solvated electrons and retrieval of true UV photoelectron spectra of liquids2019

    • 著者名/発表者名
      Junichi Nishitani, Yo-ichi Yamamoto, Christopher W. West, Shutaro Karashima and Toshinori Suzuki
    • 雑誌名

      Science Advances

      巻: 5 ページ: eaaw6896

    • DOI

      10.1126/sciadv.aaw6896

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 液体の超高速光電子分光とスペクトル回復法による溶媒和電子の束縛エネルギーと非断熱遷移の研究2020

    • 著者名/発表者名
      山本 遥一, 西谷 純一, 唐島 秀太郎, 鈴木 俊法
    • 学会等名
      第100回日本化学会春季年会
  • [学会発表] 溶媒和電子の束縛エネルギーの決定とスペクトル回復法の開発2019

    • 著者名/発表者名
      山本 遥一,西谷 純一,唐島 秀太郎, 鈴木 俊法
    • 学会等名
      原子衝突学会第44回年会
  • [備考] 京都大学大学院理学研究科化学専攻物理科学研究室

    • URL

      http://kuchem.kyoto-u.ac.jp/bukka/

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公開日: 2021-01-27  

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