昨年度はセンサリーロドプシンのレチナール発色団を修飾レチナール発色団で置換するための実験条件を検討した。その結果、50%程度の収率(出発試料である天然レチナール発色団を持つセンサリーロドプシンのタンパク質の物質量を100%としたとき)で修飾レチナールを持ったセンサリーロドプシン試料を調製することに成功した。 共同研究を行っているイスラエルのワイツマン科学研究所のMordechai Sheves教授と議論したところ、センサリーロドプシンだけではなく、様々なロドプシンについて同様の発色団置換と時間分解紫外共鳴ラマン分光測定を行うことを提案していただいた。そこで本年度は新たにグロイオバクターロドプシンの発色団置換条件を検討した。センサリーロドプシンとほぼ同様の条件で発色団の置換を検討したところ、収率50%程度で試料が得られた。以上のようにセンサリーロドプシンだけではなくグロイオバクターロドプシンについても試料調製法を確立できた。 時間分解紫外共鳴ラマン分光測定のため、人工レチナール発色団によって置換されたロドプシンを大量に合成する段階となった。しかし本年度は新型コロナウィルスによる大学への入構制限や申請者の大阪大学から東北大学への異動が重なり、研究が思い通りに進まなかった。現在、東北大学にてロドプシンの大量合成を行っている。時間分解紫外共鳴ラマン分光測定は大阪大学水谷研究室でなければ行えないため、大量合成が完了し、新型コロナウィルスによる出張制限が緩和され次第、大阪大学にて測定を実施する。
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