研究課題/領域番号 |
19K15505
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大戸 達彦 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (90717761)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 第一原理計算 |
研究実績の概要 |
破断した金属細線に分子を架橋させ、分子一つの電気伝導度を計測するブレークジャンクション法は、単一分子の電子状態や素子としての機能を調べるうえで重要な実験的手法であるが、分子架橋構造を知る指標が電気伝導度しかなく、正確な構造を知ることが難しいという問題がある。 本研究では、その問題に対し、理論計算手法を用いて下記の二つの課題を解決することを目標として掲げている。 ①分子の架橋構造についての豊富な情報を含む電流-電圧特性を、分子構造に対応させて分類する手続きを確立し、架橋構造の特定を可能とする。 ②破断過程で化学反応が起こることが期待される分子に対してシミュレーションを行い、反応確率と反応が起こる条件を原子・分子論的観点から明らかにする。 今年度は、土台となる金電極の破断過程について、反応力場REAX/FFを用いた破断シミュレーションを行い、TBSMAやMEAMといったよく使われる力場の結果と比較し、その妥当性を確かめた。金電極の太さや厚みを変えてシミュレーションを繰り返したところ、REAX/FFとTBSMAでは伝導度1G0(量子化伝導度)のプラトーが生じることを確かめた。 平行して、破断過程で分子構造が変化すると考えられるスピロピラン-メロシアニン分子について二つの構造の第一原理伝導計算を行い、二つの構造が異なる電流ー電圧特性を示すことを計算から予測した。この結果は、論文として出版された(https://doi.org/10.1039/D0NR00277A)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単一分子の構造変化に伴う電流ー電圧特性の変化を計算した下記の論文を出版することができたため。 https://doi.org/10.1039/D0NR00277A
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今後の研究の推進方策 |
今後は単一分子接合の構造を記述するための力場の開発を進め、ブレイクジャンクションにおける破断過程の構造をシミュレーションすることに取り組む。得られた構造についての電気伝導計算を進め、破断過程でとりうる構造の種類と電気伝導度を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入するワークステーションの選定に時間を要したため、次年度使用額が生じた。 次年度は、ワークステーションを購入する予定である。
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