研究課題/領域番号 |
19K15513
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
飯田 健二 北海道大学, 触媒科学研究所, 准教授 (20726567)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 第一原理計算 / 貴金属ナノ粒子 / 光誘起電子移動 / 界面 |
研究実績の概要 |
貴金属ナノ粒子-半導体ヘテロ構造における光誘起電子移動は、光受光素子や光触媒への興味から盛んに研究が進められている。この電子移動は、貴金属ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)によって発現すると考えられている。しかし、応用研究の急速な拡がりに比して、LSPRによる電子移動の機構についての基礎的研究は進んでいない。例えば、LSPRによって貴金属ナノ粒子-半導体界面に強い電子的相互作用が生じることが知られているが、その電子移動における役割は分かっていない。 そこで本研究では、銀ナノクラスターを酸化チタン薄膜に担持した系の光誘起電子移動ダイナミクスについて、第一原理計算プログラムSALMONを用いて解析した。先ず、Ag20を担持した系を計算したところ、Ag20の伝導帯に励起電子が生じることなく、Ag20から酸化チタンへと電子が直接移動するという結果が得られた。Ag20と酸化チタンを個別に最適化して接合した系や、Ag84を用いた系の計算も行ったが、同様の電子移動が発現した。そこで、電子移動ダイナミクスの機構を解析したところ、光電場によって銀ナノ粒子-酸化チタン界面に誘起される電子的相互作用に起因していることが明らかになった。 様々な貴金属ナノ粒子-半導体ヘテロ構造について光誘起電子移動の研究が進められている。その殆どの研究で、励起電子が貴金属ナノ粒子に生じた後に半導体へと移動するという2段階の経路が考えられていた。しかし、光と物質の相互作用を露わに考慮した電子ダイナミクス計算によって、銀から酸化チタンへと電子が直接移動する新たな機構が見いだされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
貴金属ナノ粒子-半導体界面における光誘起電子移動のメカニズムを解明して、その成果を論文として報告した。また、光と電圧の両者を取り込んだ計算をするためのプログラム開発も着実に進めている。従って、当初の予定通り順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、電圧を印可した系へと研究を展開する。電圧を印可した系の電子状態を計算するためのプログラムは完成している。しかし、光と電圧の両者が利用される系の多くでは溶媒が用いられる。そこで、これまで用いてきた第一原理計算手法を、溶媒効果を取り込むことができるように拡張する。そして、金や白金を薄膜に担持した系へと対象系を拡げつつ、光と電圧に対する応答機構の解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者の異動と新型ウィルスの問題という不測の出来事が生じたため、物品購入や海外発表をキャンセルした。物品購入は次年度に行うことを計画している。海外発表については、現在の状況が終息した後に、精力的に行う予定である。
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