基本波と二倍波のコヒーレントな重ね合わせで得られる位相制御2色レーザーパルスの位相差をショット毎に計測し、光電子-光イオン3次元運動量画像計測装置の測定データに紐付けるためのデバイスを作製し、その性能評価を行なった。その結果、レーザーの繰り返し周波数(1 kHz)に追随し、ショット毎に位相差の情報を取り込めることが確認された。デバイス単体の性能評価に加え、実験データとの同時計測も実施した。事後解析においてショット毎に計測した位相を用いてソートを行うことで、2色レーザーパルスの電場波形を反映して光電子が非対称に放出される様子を観測することに成功した。従来の位相差を安定化する機構と比べ、データの取りこぼしがなく、位相差の分解能も10倍程度向上することが期待される。サブ10フェムト秒の極短パルスを基本波として用いた場合でも、ショット毎の位相差計測が可能であることを確認した。また、本デバイスは極短パルスの搬送波-包絡線位相の計測にも利用可能であり、今後高次高調波を用いた軟X線分光等にも活用されると期待される。 位相制御2色レーザーパルス中で放出された光電子は、従来の単色のレーザーパルス中で放出された光電子と比べ、レーザー偏光方向に対する放出方向の非対称性という新たな情報を持っている。単色のレーザーパルス中で得られる光電子の運動エネルギーや角度分布に加えて、この非対称性を考慮した解析を行うことで、高強度レーザーパルス中での分子ダイナミクスについてより詳細な情報が得られると期待される。
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