研究課題/領域番号 |
19K15516
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
吉田 剛 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 電気情報学群, 講師 (30837456)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | イオン液体 / 一重項酸素 / 近赤外発光 / 分光測定 |
研究実績の概要 |
イオン液体は蒸気圧が極めて低く、二酸化炭素をしやすい性質を持つものが存在することから、低コストで二酸化炭素回収を行うための気体分離膜の材料として有望視されている。本研究はイオン液体の気体分離性能の最適化のために、イオン液体が持つ特異な気体溶解性発現のメカニズムについて、液体中に存在すると考えられている極めて微小な空隙を調査するため酸素分子をプローブとして用い、微小空隙に対する実験的な知見を得ることを目的とする。 2020年度(二年目)は、構築した装置の試運転と性能調査とイオン液体中における一重項酸素分子の発光測定を目指し作業を進め、典型的なイオン液体である1-methyl-3-butylimidazolium trifluorosulfonylimide中における一重項酸素の発光信号を確認した。また、いくつかのイオン液体中における一重項酸素発光の測定を神奈川大 河合明雄 教授と共同で進めた。 本年度行った装置の測定により近赤外発光分光装置の検出器をフォトダイオードに変更した影響で当初期待していたより検出感度が低下していることが判明した。比較的発光強度強い溶媒中での測定は可能であると考えられるが、酸素の溶解度が低い等の理由により強い発光が期待できないサンプルの測定を行うために光学系の改善を行う必要があると判明した。 一重項酸素発光測定を神奈川大 河合明雄教授とともに進め、一重項酸素の発光スペクトル波長がアニオンの構造に大きく影響を受けることが判明した。本件について論文を作成し、まもなく投稿を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの影響により予定の変更などがあったものの本年度までに装置の構築とイオン液体中における一重項酸素の信号の観測に成功し、さらに一重項酸素の発光スペクトルのシフトとイオン液体のアニオンの構造の関係を示すデータも得られている。本年度は本研究成果について国際学会や論文にて発表する予定であり、予定通りに進行していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
強い信号強度が期待できないサンプルにおいても一重項酸素の発光測定を十分な感度で行えるよう光学系の改善を行い、様々なイオン液体中における一重項酸素発光スペクトルの測定を行う。また、今年度はこれまで得られた知見をまとめ、論文や国際学会で発表する予定である。さらに、これまでの実験的知見をもとに分子動力学計算の観点からイオン液体中の空隙についての理解を深めることをめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に参加予定だった2件の学会が新型コロナウイルスの影響により2021年への延期、日程変更により参加不可能になり参加を断念したため出張費用として使用予定だった予算を繰り越した。繰り越した予算は本年度の国際、国内学会への出張とイオン液体サンプルの購入、装置の改良に使用する予定である。
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