研究課題
イオン液体は蒸気圧が極めて低く、二酸化炭素をしやすい性質を持つものが存在することから、低コストで二酸化炭素回収を行うための気体分離膜の材料として有望視されている。本研究はイオン液体の気体分離性能の最適化のために、イオン液体が持つ特異な気体溶解性発現のメカニズムについて、液体中に存在すると考えられている極めて微小な空隙を調査するため酸素分子をプローブとして用い、微小空隙に対する実験的な知見を得ることを目的とする。2021年度は当初の予定通り、これまでに構築した装置によるイオン液体中の一重項酸素発光スペクトルの測定と、測定結果のまとめ作業を行った。本研究により、イオン液体中に存在する一重項酸素の発光スペクトルには以下3点の傾向が確認された。①イオン液体中の一重項酸素の発光ピークは長波長に偏る傾向がある。②いくつかのイオン液体にて、先行研究で報告されている屈折率と一重項酸素の発光ピーク波長の相関から大きく外れるものが確認された。③屈折率と発光ピーク波長の相関から大きくずれるイオン液体は大きな体積のアニオンで構成されている傾向がある。以上のような傾向を説明する物理的なモデルについて、イオン液体の密度とvan der Waals体積より推定した自由体積をもとに検討し、イオン液体中における気体分子の溶解について議論した。本結果を論文誌: The Journal of Chemical Physicsにおいてタイトル: O2 solvation cavity in voids of ionic liquids studied by the solvatochromic red shift of O2(1Δg) [doi: 10.1063/5.0073955]として発表した。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
The Journal of Chemical Physics
巻: 155 ページ: 234503~234503
10.1063/5.0073955