本研究は、単分子磁石化合物における量子トンネリング現象の制御を目指して、単分子磁石間の分子間相互作用と磁気緩和ダイナミクスの解明に取り組んだ。水素結合相互作用によって結晶中で単分子磁石を二次元シートまたは一次元鎖状に配列化させることで分子間相互作用を導入した。通常、コバルト(II)イオンを用いた単分子磁石では外部磁場無しでは量子トンネリングにより迅速な磁気緩和を示すが、一次元鎖状に配列した例ではゼロ磁場で遅い磁気緩和挙動を示すことがわかった。また、一次元鎖内の隣接する分子間の距離が0.7 nm未満かつその差が0.02 nm以上の場合に最も効果的に量子トンネリングを抑制できることがわかった。
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