研究課題/領域番号 |
19K15527
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
坂牛 健 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, 主任研究員 (50756484)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 多電子・多イオン移動反応 / エネルギー変換・貯蔵反応 / 電極過程科学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、基礎的なエネルギー変換反応を高効率に進行させるために必要な知見を得ることである。このために、構造が精密に制御された配位構造体を用いて、基本的なエネルギー変換反応の微視的機構を理解し、その理解に立脚して、目的の反応をより高効率化するための原理を明らかにすることを目指している。特に、本研究では、複数の電子と共に、複数のプロトンや、アニオン、カチオンが移動する、多電子・多イオン移動反応に注目している。 本年度(2019年度)は、上記の目的を達成するために、研究対象とするモデル物質系の確立に注力をした。本研究では、ヘキサアミノベンゼンを有機配位子として用いて銅イオンと共に合成した配位構造体が比較的高い結晶性とともに金属的な電子伝導性を示すことを見出し、それを基準物質とすることにした。この基準物質に対し、有機配位子をベンゼン骨格に3つのアミノ基と3つのヒドロキシ基と6つすべてヒドロキシ基で修飾されたものを用いて、銅イオンを用いて配位構造体を合成した。結果として、NからOと電気陰性度が大きくなるにつれてイオンの脱挿入に関わる酸化還元電位が貴になっていった。これは、酸化物で良く知られているInductive効果と呼ばれるもので、物質の電子構造のうち、金属に由来するものが、陰イオン(本研究の場合は有機配位子)との相互作用により変換したことを示している。 この結果により、配位構造体は、それを構成する有機配位子を様々に修飾することで、物質の電子構造が制御できることが示された。このことにより、適切な有機配位子と金属の組み合わせにより、よりエネルギー変換効率の高い材料が得られる可能性があると考えている
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本骨格が同じ有機配位子でも修飾の選択により、電気化学特性をも調節できることを確認したため
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今後の研究の推進方策 |
2019年度において合成された配位構造体の電子特性を制御するために、様々な金属イオンを今回合成に成功した有機配位子に適用する。こうすることで、構造と電気化学特性の相関を明らかにし、今年度得られた物質をさらに高特性化するための基礎原理を確立することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入を必要最低限に留めることができたため、次年度使用額が生じた。これは、2020年度の消耗品購入に使用する予定である。
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