本年度は、昨年度に引き続きモデル物質系の確立に注力し、得られた材料を電極触媒として水素発生反応および酸素還元反応に適用した。まず、得られた大きな成果として、配位構造体電極触媒の活性はpHに非常に大きく影響を受けることを確認した。これは、昨年度の成果より配位構造体は、それを構成する有機配位子を様々に修飾することで、物質の電子構造が制御できることが示されていたが、ある特定の有機配位子と金属の組み合わせでは、例えば強酸性環境では、配位構造が不安定になっているためと実験により示された。また、構造体によっては、水素発生反応の平衡電位に到達する前に構造体自体が還元反応を起こしてしまい、それにより電子伝導性が低下したためである可能性が示唆された。このため、当初、金属的な非常に高い電子伝導性を示す構造体であっても、目的の電気化学反応が進行する電位では、電子伝導性が低下してしまい、高い活性が出せないという問題が新たに浮上した。そのため、当該研究によって金属的電子伝導性配位構造体が電極触媒として機能することは、確認できたものの、目的の反応に高活性な同構造体を設計するには、その反応の平衡電位でも高い電子伝導を維持できるような特性を設計する必要があることが分かった。また、pHによって配位構造が不安定化する配位子と金属の組み合わせがそれなりにあることから、水素発生反応の平衡電位よりも卑な電位でも安定であることが、高特性と合わせて重要な要件であることがわかった。
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