研究課題/領域番号 |
19K15535
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
矢崎 晃平 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (90800813)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | MOF / polyMOF |
研究実績の概要 |
本研究では、2つのナノ空間を持つホスト分子を用いたキラル分子の内包と、構造変化によるキラル分子の認識・分離を目的とする。これまで生体内での分子認識を模倣して、様々な形状のホスト分子が報告されてきたが、既報のホスト分子は1つの空間しか有していない。それに対して、本研究では2つのナノ空間を持つホスト分子を合成した。これを拡張して、複数の空間を持つ物質としてMOFに着目し、MOFとポリマーを組み合わせたpolyMOFの構築手法の開拓に成功した。 1. ベンゼンジカルボン酸(BDC)部位を側鎖に有するポリマー配位子の合成 まず、 BDC部位を有するモノマーをウイリアムソンエーテル合成により収率86%で得た。次にカチオン重合および加水分解によりBDC部位を有するポリマー配位子の合成に成功した。得られたポリマー配位子の構造は、NMRにより決定した。 2.側鎖型ポリマー配位子を利用したpolyMOFの合成 つぎに、ポリマー配位子とZnイオンとの自己集合によりpolyMOFの合成に挑戦した。具体的には、ポリマー配位子とZn(NO3)2をDMFに溶解して、100℃で加熱することによりフィルム状のpolyMOFを得た。XRDの測定結果から、得られたpolyMOFは、MOF5と同一の構造を形成してることが明らかとなった。驚くべきことに、通常は粉末にしかならないMOFがフィルム状の形態で得ることができた。 以上の結果は、結晶形成に適さないと考えられていたポリマーを利用した場合にも結晶性のMOFを形成することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダブルカプセルの研究テーマから派生して、側鎖に配位子を有するポリマーと金属イオンとの自己集合により、polyMOFの構築に成功した。得られたpolyMOFはフィルム状の形態であり、これまで成型が困難であったMOFのフィルム化を実現した。以上の結果は、New Journal of Chemistry に掲載され、さらに表紙にも採択された。
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今後の研究の推進方策 |
MOFは既に20,000種類が報告されているため、今後は、配位子の適応範囲の検討を行う。そして、様々な形状のMOF配位子に適用できることを実証する。具体的には、ベンゼン環の連結数を変えた長さの異なる配位子(ビフェニル, ターフェニル)を側鎖に有する配位子を合成し、これらを用いてpolyMOFの合成に挑戦する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に実験テーマをスタートした際に試薬購入費に多く使用した。一方で、ガラス器具などの消耗品の購入が少なめであったため79057円を繰り越した。繰越分は次年度の消耗品購入などに消費する予定であり、計画通り研究の遂行が可能である。
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