研究課題
窒素原子のアミン型-イミン型相互変換に基づいた酸化還元による可逆な変換が可能なπ電子系化合物として、7,12-ジヒドロベンゾ[de]インドロ[3,2-b]キノリンの合成に成功した。これは、当初の計画中における中央に五員環-六員環構造を持つ誘導体である。骨格合成にはN-アセチル基の導入が必要であったが、光フリース転位によりアセチル基が窒素原子から隣接する炭素原子に移動した構造へと変換できることがわかった。この転位生成物はアミン型-イミン型相互変換に基づいた酸化還元が可能な分子構造を有しており、NiO2を用いた酸化とNaBH4を用いた還元により相互変換できることが明らかとなった。以上の化合物について、分子構造、電子的特性および特異な反応性を詳細に調査した結果について論文投稿を行った。ここで、中央に五員環-六員環構造を持つ誘導体は還元体であるアミン型構造が安定であり、中央に六員環-六員環構造を持つ類縁体とは対照的な結果を示した。この理由としては、周辺アセチル基の電子求引性および水素結合能が挙げられたため、次の標的化合物としてπ電子系にカルボニル基を含んだ誘導体の合成検討を行った。また、中央に六員環-六員環構造を持つ類縁体に対して、電子ドナー性置換基としてジフェニルアミノフェニル基を導入したドナーアクセプター型色素の合成を行った。その結果、得られたドナーアクセプター型色素はイミン型窒素上のプロトン化によって電荷移動遷移が発現し、1100nm付近に鋭い吸収帯を示す近赤外吸収色素となることが明らかとなった。
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