研究実績の概要 |
本研究の目的は、特異な固体発光特性を示すベンゾ[d]ジチエノ[b,f]ボレピンと呼ばれるに様々な置換基を導入することで、結晶構造や電子状態が固体状態の発光色にどのように影響を与えるかを調査することで、革新的な動的発光性分子材料の創出につながる、新しい分子設計のコンセプトを得ることが目的である。 令和二年度は、ベンゾ[d]ジチエノ[b,f]ボレピンのホウ素上の置換基を様々なアリール基に置換し、それらが固体発光特性に与える影響を調査した。ホウ素上の2,4,6-トリメチルフェニル基を2,4,6-トリイソプロピルフェニル基や2,4,6-トリス(トリフルオロメチル)フェニル基といったより嵩高い置換基へ変更すると、赤色発光の強度が大きく変化したことから、ホウ素周りの嵩高さが固体発光特性に大きく影響を与えることが明らかになった。また化合物によっては、再結晶によって青色発光と赤色発光を示すものが、別々に得られることもわかった。現在、これらの結晶を分離し、それぞれの単結晶X線構造解析を試みている。 また、ベンゾ[d]ジチエノ[b,f]ボレピンのポリマーについても合成を行った。得られたポリマーは可視光領域に吸収・発光を示し、ボレピン構造を用いた場合でもホウ素のp軌道を介して共役が拡張することを明らかにした。 これらの成果に加えて、環構造の影響を調査するため、七員環であるボレピン環を六員環のボリニン環に変更した化合物についても合成を行った。ボリニン環構造を持つ分子では赤色発光は見られなかったものの、これを二量化した化合物は低いLUMO準位と長波長の吸収を持つ、興味深い構造であることがわかった。
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