研究課題/領域番号 |
19K15545
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
山本 拓平 岐阜薬科大学, 薬学部, 講師 (40758728)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ジスルフィド |
研究実績の概要 |
アミノ酸のシスチンやフェニルアラニンなどの側鎖を利用し、バイオナノテクノロジーに応用可能な導電性ペプチド開発のため、本研究では、シスチンの側鎖であるジスルフィド基とフェニルアラニンの側鎖であるフェニル基を交互に並べた新規導電性物質の合成を行っている。 初年度に引き続き、2年目も目的化合物の合成を行った。ノルボルナン基の2位にフェニル基を導入し、次にジスルフィド基の元となるチオールの導入を試みたが、立体障害により目的中間体は得られなかった。そこで、次にジスルフィド基の元となる保護基のついた硫黄を導入し、その後フェニル基を導入するルートの変更を行ったが、途中で得られる化合物が不安定で分解することが明らかとなった。現在は、分解の原因となる部分を避けるルートでの合成を試みている。 しかし、様々な隣接基を持ったジスルフィド化合物合成の過程において、現在まで報告のなかったジスルフィド基の求核性が見いだされた。ジスルフィド基は、通常チオラートや、アルキルリチウム、ヒドリドなど、マイナス電子の攻撃を受ける求電子試薬であるが、求電子性の官能基を隣接した場合、ジスルフィド基は求核試薬となることが分かった。その特性を利用して、チオカーバメイトのワンポット合成が可能であることが明らかとなり、2021年度のAmerican Chemical Society Spring international meetingにおいて、発表を行った。この結果から、チオカーバメイトを隣接するジスルフィド基をカルボン酸から合成する場合、ジスルフィド基を脱保護を必要としないチオールと同等にとらえることができ、ワンポットで簡単に合成できる方法を明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
この目的化合物は、以前クラスらによって報告された化合物を類似しており、違いは、ノルボルナンの6位にチオエーテルがあるか、ジスルフィド基なのかである。よって、当初、合成は大きな困難なく進むと考えられたが、今まで知られていなかったジスルフィド基の特性(上記American Chemical Societyでの発表につながった)が、目的化合物の合成を困難にしている。また、該当する目的化合物は、通常では存在しない立体障害を持ったものであり、このことも合成を困難にしている。 現在、引き続き、様々なルートによる合成を試みている。また、新たな導電性物質を合成・評価するという目的を変えず、モデル化合物をジスルフィド基とフェニル基を並べたものから、ジスルフィド基、カルボニル基、フェニル基と間にカルボニル基を並べた、新たな導電性物質の合成も試みている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、引き続きジスルフィド基とフェニル基を交互に並べた目的化合物の合成を行う。また、ジスルフィド基-カルボニル基-フェニル基と、間にカルボニル基を挟んだ化合物の合成も行う。この化合物は合成方法が容易で、実際数種類合成に成功している。また、サイクリックボルタンメトリーにより測定も行われており、さらに数種類の合成と電気化学により評価を行う予定である。加えて、このシステムによる導電性物質も合成し、電子の取れやすさ、入りやすさなど、導電性物質としての性質を電化学測定や、量子化学計算により評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で、必要に応じ、研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初の予定通りの計画を進めていく。
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