研究課題/領域番号 |
19K15565
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
浅子 壮美 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 上級研究員 (80737289)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | モリブデン / ルテニウム / カルボニル化合物 / シクロプロパン / 脱酸素 / カルベン / 炭素-水素結合切断 / 炭素-炭素結合切断 |
研究実績の概要 |
ジアゾ化合物は、シクロプロパン化や炭素-水素結合活性化に利用できる有用な活性種であるカルベンを発生させるために最もよく用いられる前駆体である。しかしながら、ジアゾ化合物のもつ潜在的な爆発性や毒性に関する問題点を解決するために、安定すなわち不活性な化合物をジアゾ代替とする反応の開発が望まれている。そのような反応は必然的に、結合エネルギーの大きい不活性結合の二重切断を経由する必要があるため困難であり、報告例はあまりない。本研究では不活性結合の二重切断により生成する金属カルベン種を基盤とする全く新しい物質変換反応の開発を目的とする。具体的には、安定で入手容易なカルボニル化合物の炭素-酸素二重結合切断やシクロプロパンのgem 炭素-炭素単結合二重切断による金属カルベン種発生を利用する次世代型物質変換法の開拓を目指す。本年度は、カルボニル化合物の脱酸素を経由する触媒的炭素-炭素二重結合形成反応について、さらなる反応条件精査および基質一般性調査を行った。モリブデン-キノン触媒と温和なリンやケイ素還元剤を用いると反応が円滑に進行した。分子間反応においては、基質としてアルデヒドを利用することが可能であり、選択的にE体のオレフィンが得られた。また、二官能性基質を用いることでマクロサイクルやオリゴマー合成へ応用できることを見出した。分子内反応においては、アルデヒドやケトンを用いて種々の多環芳香族炭化水素が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脱酸素または逆シクロプロパン化を経て発生させたカルベン種を、C(sp3)-H結合およびC(sp2)-H結合への挿入、求電子剤および求核剤による捕捉、二量化によるオレフィン合成、オレフィンメタセシス触媒に利用できることを見出した。DFT計算により、4種類の不活性結合二重切断に効果的な触媒および基質の設計指針が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
カルボニル化合物の分子間および分子内触媒的脱酸素反応によるオレフィンおよび多環芳香族炭化水素の合成に関して研究をとりまとめる。系中調製した金属カルベン種の触媒利用やアルカン、アルケンの結合二重切断反応については、実験・理論研究により触媒効率の向上、反応一般性の調査、反応機構の解明に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
前例がほとんどないカルボニル化合物の触媒的脱酸素カップリング反応に関して、2021年末に入国できた研究員を中心に期間を延長して研究をとりまとめる。未使用額は、反応条件検討、基質一般性調査、多環芳香族炭化水素合成への応用研究に必要な消耗品の購入および研究成果発表に使用する予定である。
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備考 |
http://iliesteam.riken.jp/home_JP.html
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