研究課題/領域番号 |
19K15567
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
河崎 悠也 九州大学, 先導物質化学研究所, 学術研究員 (00781999)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | DACN / クリック反応 / 多分子連結 |
研究実績の概要 |
2019年度の研究では,先に我々が開発したDACNの実用的合成法を開発するとともに,ペプチド,たんぱく質の化学修飾に有用な,DACN誘導体の開発を行った.その結果,再結晶精製のみで多様なDACN誘導体を収率良くグラムスケールで合成することに成功した.それにより合成したDACNを誘導化することで,一方の窒素上に分子連結基として,アミン類と迅速にアミド結合を形成するNHSエステル部位を導入したDACN NHS エステル,チオール類と迅速にC―S結合を形成するマレイミド部位を導入したDACN マレイミドを合成すること成功した.さらに,それらがリシン残基及びシステイン残基を介したペプチド,たんぱく質の化学修飾素子として有用であることを明らかにした.また,大神田教授(信州大)の研究グループとの共同研究で,アジドを導入したfusicoccin誘導体とDACNを導入したペプチドとをクリック反応によって複合化することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DACNの実用的合成法を開発することで,窒素上の置換基がTs基のDACNだけでなく,Ns基,Ms基を有するDACNの大量合成が可能になった.さらに,多分子連結型DACNの開発に関して,大きな研究の進展が見られた.具体的には,DACN NHSエステル,DACN マレイミドの合成に成功するとともに,それを用いたペプチド,たんぱく質の化学修飾に成功した.本結果は,DACNが生体機能分子の化学修飾に有用であることを示唆しており,現在,多用な生体機能分子の化学修飾への応用を検討中である. なお,本研究で開発した多分子連結型DACNは関東化学株式会社より販売されることが計画されている.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に開発した多分子連結型DACNは,一方の窒素上にのみ分子連結基を有する誘導体であった.これに対して2020年度は,二つの窒素上に異なる反応性の分子連結基を導入した多分子連結型DACNの合成を目指す.特に,N-Fmocアミノ酸型 DACNの開発を行う計画である.N-Fmocアミノ酸型 DACNを用いたペプチド固相合成によって主鎖にクリック反応部位を有するペプチドの創出が可能になると期待している. さらに,生化学分野の研究者との共同研究を積極的に実施して,DACNの汎用性を明らかにする計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも試薬,反応溶媒の使用量が少なかったため,来年度使用額が生じた. 次年度は,より大量スケールでの合成を実施する. また,合成したペプチドの生物活性評価を行う計画である.
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