研究課題/領域番号 |
19K15568
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
小嶺 敬太 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 助教 (70838268)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 天然物合成 / ビシクロ骨格 / テルペン / ラジカル反応 |
研究実績の概要 |
ビシクロ[3.3.1]ノナン骨格を有するペニシビラエンの合成研究を行った。本天然物のコア構造であるビシクロ骨格構築のための前駆体の合成を検討した。 入手容易な2-メトキシ-4-メチルフェノールからアルデヒド体へと導いた後、研究計画に則って炭素鎖の伸長を試みたが反応は進行しなかった。そこで様々な方法を用いて検討した結果、対応するアルキン体との薗頭カップリングにより、炭素鎖を伸長することができた。すなわち、2-メトキシ-4-メチルフェノールに対し、THP保護と続くオルトリチオ化を行いアリールヨージドへと変換後、4-ペンチン-1-オールと薗頭カップリングを行いアルキン体を得た。得られた化合物に対し、接触水素化反応やLuche還元、Eschenmoser試薬を用いたメチレン化等を行い、フェノール体へと導いた。続いてフェノール体の酸化的脱芳香化反応と続くDiels-Alder反応の検討を行った。フェノールの酸化的脱芳香化反応は円滑に進行し、望む生成物を選択的に与えた。しかし、その後のDiels-Alder反応において当初予期していた生成物ではなく、その異性体が高立体選択的に得られることが判明した。環ひずみが原因で立体選択性が逆転したと考えられたため、分子内反応から分子間反応に合成計画を変更し、Diels-Alder反応を試みた。すると反応は円滑に進行し、望む生成物を位置および立体選択的に得ることに成功した。最後に、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いたアルデヒド選択的な還元等、種々官能基変換をし、鍵反応前駆体を合成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ペニシビラエンの合成研究において、量的供給が可能な鍵反応前駆体の合成法の確立は、大変重要な位置付けであり、本年度の目標であった。鍵反応前駆体を合成するために、当初は分子内Diels-Alder反応を行い、コア骨格を構築する計画であった。しかし、望まない異性体が高立体選択的に得られたため、種々検討した。最終的に、分子間Diels-Alder反応に研究計画を切り替えることによって、位置および立体選択的に望む生成物を得ることに成功した。すなわち、本年度の目標であった、鍵反応前駆体およびその立体異性体を高立体選択的に合成する方法を確立することに成功した。 上記の理由から、本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
鍵反応前駆体の合成法を確立することができたが、収率に改善を要する。そこでまず、分子間Diels-Alder反応を精査し、収率の向上を検討する。次に、鍵であるラジカル反応の検討を行う。AIBN/Bu3SnHや、SmI2、青色LEDを用いた光触媒反応など、様々な条件を用いて精査する。本反応がうまく進行しない場合は、ケトンを対応するアルコールに変換する等、基質の構造を変換することでラジカルの反応性を調節し、検討を行う。その後、得られた化合物に対し各種官能基変換を行い、ペニシビラエンの全合成を行う。また、本合成はラセミ合成であるので、不斉有機触媒を用いたエナンチオ選択的なDiels-Alder反応の検討を行う。 本研究計画は、十分精査したものであるが、万が一、当初の計画通りに進まない場合、適宜柔軟に合成戦略を修正し、ペニシビラエンの全合成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ペニシビラエンの合成研究は順調に進行しているものの、僅かながら使用額に差額が生じた。次年度により高額な試薬の購入が予想されたため、次年度の予算にまわした。本年度の未使用額と翌年度分として請求した助成金と合わせ、研究計画に則って使用する計画である。
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