研究実績の概要 |
R1年度は以下に示す新反応の開発を行い、成果は国際学術誌に掲載された。 ① カチオン性イリジウム触媒によるアルデヒドの脱カルボニル化(Synlett 2019, 30, 972-976.);[IrCl(cod)]2のような中性イリジウム錯体によるアルデヒドの脱カルボニル化は報告されているが、これまでにカチオン性イリジウム錯体をアルデヒドの脱カルボニル化に用いた例はない。検討の結果、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボレート(BArF)を対アニオンとするカチオン性イリジウムとXyl-BINAPから成る錯体がアルデヒドの脱カルボニル化触媒として有効であることを見出した。本触媒系は、種々の芳香族アルデヒドや脂肪族アルデヒドに適用可能である。 ② カチオン性イリジウム触媒によるケトンの分子内不斉ヒドロアシル化(Chem. Asian J. 2020, 15, 1858-1862.);脱カルボニル化条件のチューニングにより、カチオン性イリジウム/(R)-SEGPHOS触媒存在下、2-ケトベンズアルデヒド類の分子内不斉ヒドロアシル化反応が高エナンチオ選択的に進行し、光学活性フタリドを与えることを見出した(最高98%ee)。本反応は、ホルミル基炭素-水素結合の活性化を起点とした結合の組み換えにより光学活性フタリドを与えるものであり、高いアトムエコノミーをもつ低環境負荷型の分子変換法である。また、簡易的な機構解析実験により、炭素-水素結合の活性化が律速段階に含まれない可能性が高いことを明らかにした。
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