研究課題/領域番号 |
19K15575
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研究機関 | 高知工業高等専門学校 |
研究代表者 |
白井 智彦 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 講師 (80784644)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脱カルボニル化 / 脱カルボニル型不斉アリール化 / カチオン性イリジウム |
研究実績の概要 |
アルデヒドを用いるアルケンの不斉カルボホルミル化反応は、高いアトムエコノミーを持つ光学活性化合物の合成法になるが、反応開発の歴史は浅い。本反応の達成には、アルデヒドの脱カルボニル化を伴う不斉炭素-炭素結合形成反応,及び脱カルボニル化により生じる一酸化炭素の再固定化反応の連続過程が必要である。しかし、現状ではアルデヒドの脱カルボニル化を伴う不斉炭素-炭素結合形成反応に関する成功例すら報告されていない。今年度の研究では、芳香族アルデヒドの脱カルボニル化を伴う不飽和化合物の不斉アリール化反応の開発を目的として検討を行い、新反応の開発に成功した。BArF(テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート)をカウンターアニオンとするカチオン性イリジウムとキラルな二座ホスホロアミダイト配位子から成る触媒を用いると、芳香族アルデヒドのビシクロアルケンへの脱カルボニル型不斉アリール付加反応が高エナンチオ選択的に進行することを見出した。本反応は、芳香族アルデヒドの脱カルボニル化を不斉アリール化反応に利用した初めての研究成果である。また、本反応は高い置換基許容性を示し、様々な光学活性アルキルアレーンを与える(最高99%ee)。重水を用いる機構解析実験から、ホルミル基炭素-水素結合の活性化が不可逆的に進行していること、また、重水素化基質を用いた速度論的同位体効果(KIE)の測定から、炭素-水素結合の活性化は本触媒反応の律速段階に関与していない事を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の検討において、アルデヒドの炭素-炭素結合切断を伴うアルケンの不斉カルボホルミル化反応の基盤となる脱カルボニル型の不斉炭素-炭素結合形成反応の開発に成功した。カチオン性イリジウム触媒を用いると、芳香族アルデヒドの脱カルボニル化を伴ってアリール錯体が生成する。アルデヒド上の配位性置換基によってアリール錯体を安定化することで、連続的にビシクロアルケンの不斉ヒドロアリール化反応に応用できることを見出した。本成果は国際学術誌に掲載され(Chem. Eur. J. 2022, 28, e202104347)、同誌のHot Paper及びFront Coverに選出された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討で得られた成果を基盤としてアルケンの不斉カルボホルミル化反応の開発を進める。脱カルボニル型の不斉アリール化反応に関する研究も継続して検討を行い、知見を蓄積する。これらの成果を基に新規不斉配位子の設計・合成を行い、反応性やエナンチオ選択性と配位子特性との相関についても詳細に調査する。
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