5員環アライン化合物を金属への配位によって安定化し構造決定することは、長年その存在が議論の対象となっていた高ひずみ分子について新たな知見を与える、学術的に意義深いものといえる。本研究により開発された、炭酸ビニレンをカップリングパートナーとした新たな触媒反応は、従来法で課題となっていた当量酸化剤を必要とせず、合成の難しい無置換の縮環構造を効率的な構築を可能となることは、強力な合成ツールとして広く利用されることが期待される。炭酸のみを副生するという点は、近年課題とされる環境調和性の観点からも優れた技術を開発できたといえる。
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