研究課題/領域番号 |
19K15589
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
堀内 新之介 長崎大学, 工学研究科, 助教 (50755915)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 発光性超分子 / 自己集合 / 分子認識 / 光化学 / アニオン / イオン対 / 円偏光発光 |
研究実績の概要 |
本年度は昨年度に報告していた錯体内包型超分子の発光特性と形成条件に関する研究をまとめた。用いたカチオン性金属錯体は同じでも対アニオンのサイズが小さい場合,レゾルシンアレーンと混合させると大きな発光変化が観測された。反対にサイズの大きな対アニオンの場合,レゾルシンアレーンと混合させても発光スペクトルの変化が小さかった。錯体内包型超分子が形成すると発光波長がシフトすることから,発光波長は超分子形成の指標となる。すなわち,サイズの大きな対アニオンの場合,錯体内包型超分子が形成しにくくなり,超分子の熱力学的安定性が低下することが示された。核磁気共鳴(NMR)測定の結果から,対アニオンはカチオン錯体と一緒に水素結合性カプセルに包接され,イオン対として錯体内包型超分子構造を形成していることが明らかになった。分子モデルや空隙体積計算を行ったところ,水素結合カプセル内にIr錯体と対アニオンが共存できるスペースがあることも分かった。また昨年度,キラルIr錯体を包接した発光性超分子が円偏光発光を示すことを明らかにしている。論文化に向けて,その成果も最終データを集めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,昨年度明らかにした対アニオンによる光機能制御に関する論文を報告できた。この結果は錯体内包型発光性超分子の分子設計に重要な指針を与える成果である。また,円偏光発光を示す発光性超分子に関する実験データも集まってきており、論文化を進めている。これらの進捗状況を総合的に判断すると,おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後もこれまでに見出した成果を基礎として,発光性超分子の光機能の自在制御を引き続き検討していく。はじめに円偏光発光を示す錯体内包型超分子に関するデータを集め、論文化を目指す。一方で,錯体内包型超分子のコンポーネントからなる結晶性化合物も得られており,固体状態における光物性調査も行なっていく予定である。それらと並行し,包接可能な金属錯体の探索も引き続き進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルスの影響のため,当初予定されていた国際学会が次年度開催となったこと,また,海外共同研究先に送付する測定用サンプルを新たに合成する必要があるため,次年度に繰り越すことになった。
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